(写真はイメージです/PIXTA)

身の回りの世話をしてくれた孫娘に全財産を譲りたい。そう考えた高齢男性の遺産をめぐって発生した相続トラブルの解決方法をアイリス仙台法律事務所の関野純弁護士が解説します。

思いを叶える相続を実現するためには

生前に親戚付き合いがなく、疎遠であった相続人は、故人の意思をまったく考慮できず、紛争になるケースは珍しくありません。

 

故人の意思を実現させるために、「遺言書」という制度が用意されていますが、日本では、「遺言書」を書くことへの心理的ハードルはまだまだ高いといわざるをえません。

 

そのため、遺言書がない以上、少しでも故人の想いを実現するための方法を考えなければなりません。

 

今回のケースで、仮にB子さんが「C男さんに1円も払いたくない」と主張をし続ければ、「遺産分割調停」は不調(不成立)となり、裁判所からは、「C男さんに対して、4分の1相当の金銭を支払え」との判断が下されてしまうことになったでしょう。

 

こうした最悪の結果を避けるために、早期に相当な金銭の支払いを提示することで、相手にとっても、「1年後に取得できる不確実な100%の金額」よりも、早期かつ確実に支払われる80%の金額」が「得である」と思わせることで、早期解決が実現したものです。

 

相続問題は、経済的な損得以上に感情的な対立が表に出やすく、冷静な話し合いができないケースが多々あります。そして、意地を張り続けた結果、思いを叶える相続を実現できなくなってしまいます。

 

どこで、折り合いを付けるのか、その判断は、とても難しい作業です。

 

筆者は多数の相続事件を扱っていますが、ひとつとして同じ事件はないと感じており、一人一人の当事者の思いにいかに寄り添えるかが、相続を扱う弁護士に求められる資質だと感じています。

 

 

関野 純

アイリス法律事務所 弁護士

 

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