(写真はイメージです/PIXTA)

身の回りの世話をしてくれた孫娘に全財産を譲りたい。そう考えた高齢男性の遺産をめぐって発生した相続トラブルの解決方法をアイリス仙台法律事務所の関野純弁護士が解説します。

全財産を受け取る「戦略」はうまくいくのか?

今回のケースでは、C男さんと冷静な話し合いをすることは困難であると考え、家庭裁判所に遺産分割調停の申立をするべきと助言し、了解をいただきました。

 

加えて遺言書がない場合、相手が反対する状況では、法定相続分の大きな修正を争うことは困難であり、調停での「戦略」を練っていく必要があることを説明しました。

 

その結果、調停では、以下、2点を強く主張することにしました。

 

ひとつ目は、C男さんがA夫さんに対し、お金を無心していた事実を「特別受益」と主張すること、ふたつ目は、B子さんがA夫さんの身の回りの面倒を献身的に見ていたことを「寄与分」と主張することです。

 

実務上、「特別受益」や「寄与分」が認定されるハードルは高く、本件でも立証の程度や法的評価の前提事実などから、最終的な裁判所の心証を得るのは厳しいと考えましたが、それでも、法定相続分からの修正を訴える以上は、法的な枠組みでの主張は不可欠と考えました。

 

迎えた第1回調停期日において、当方は、「特別受益」「寄与分」の主張をした後で、遺産の評価額の6分の1に相当する金額を1カ月以内にC男さんに支払う、という提案を行いました。

 

C男さんの法定相続分は4分の1ですから、C男さんには不利な提案です。しかし、「1円も譲歩しない」と主張していたC男さんも、まとまった金額が確実に1カ月後に手に入る、という当方の提案が予想以上に響いたようで、最終的には、当方の提示金額に多少の上乗せをした金額をC男さんに支払うことで、C男さんと合意ができました。

 

また、A夫さんの他の相続人2名は、B子さんが献身的にA夫さんの身の回りの世話をしていることをよくわかっていたため、B子さんがA夫さんの全財産を相続することは当然であるとして、相続分をB子さんに譲渡してもらえました。

 

これによって、B子さんは、A夫さんの財産の大部分を相続することができました。

 

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