筑波こどものこころクリニック院長/小児科医の鈴木直光氏は著書『新訂版 発達障がいに困っている人びと』のなかで、発達障がいとどのように向き合うべきか語っています。本記事では、発達障がい本人とその家族の「こころの問題」についてひも解いていきます。
我が子に「発達障がい」の疑いが…理解ない父が放った衝撃のひと言【医師が解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

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「なんで病院なんか行く必要があるんだ!」

発達障がいを専門に扱う小児科医は、親子一緒に診ることが望ましいでしょう。中でも、患者さんの父親が自閉スペクトラム症やADHDを抱えていて、母親が悩まされているということが多いようです。

 

このような場合、父親は、なかなか一緒に外来へは来ません。自分のお子さんを発達障がいと認めず、根性論で治せると勘違いしています。

 

 

そして、「なんで病院なんか行く必要があるんだ」と母親を責めてしまう父親もいます。仮に外来へ来たとしても、怒鳴ったり叩いたりしてでもやらせるという根性論の躾が間違いないと医師に言ってほしいために、来ていることが多いのです。

 

しかし、私はそういう父親に対して毅然(きぜん)とした態度で、「その考えは間違っています」とはっきりと告げます。なぜなら、そのような考えで接することが、お子さんの発達障がいの症状を悪化させる原因になるからです。

 

「怒鳴ったり叩いたりしても意味がありません。かえってお子さんの自尊心を傷つけてしまってやる気をなくしたり、自分より立場の弱い子を叩くようになったりしますよ」

 

私がそう強く言ってもまだ半信半疑な方も少なくありません。ましてや自分も発達障がいかもしれないということを理解してもらうには、少し時間が必要となります。

 

ゆっくりでもいいので発達障がいを勉強してもらうことが必要です。しかし、同じ時代に育ったにも拘わらず、母親には、教師、医師、ママ友などからさまざまな情報が入ります。そして今まで苦労して育ててきた中でのさまざまなクレームに甘んじてきた過去の経験からか、もはや根性では治らないと悟り、もしかしたら夫も発達障がいではないかと気づいて相談しに来る母親も多くいます。

 

母親は自分が得た情報を夫や祖父母など、家族にしっかりと伝えてあげてください。そして、夫が発達障がいを理解し、自分がもしかしたらそうかもしれないと気づいた場合、お子さんと一緒に治療するように説得してほしいのです。大人でも治療は可能です。