筑波こどものこころクリニック院長/小児科医の鈴木直光氏は著書『新訂版 発達障がいに困っている人びと』のなかで、発達障がいとどのように向き合うべきか語っています。本記事では、発達障がい本人とその家族の「こころの問題」についてひも解いていきます。
(※画像はイメージです/PIXTA)
発達障がいの人が孤立してしまう、負のスパイラル
名前も正確に呼ばなければ、相手が初対面の医師であろうと訂正します。例えば本名が、私と同じ「すずきなおみつ」だったとします。私は、「なおちゃん」と呼ばれても気にしません。むしろ親しく呼んでくれたことに、喜びすら感じることもあるでしょう。
しかし、発達障がいを抱えた方の中には、「なおちゃん」と気安く呼ぶと、私の名前は「すずきなおみつ」ですよ、「なおちゃん」ではありません、と答える方もいます。「なおみつ君」と「君」をつけても、「なおみつ」と名前の方だけ呼び捨てにしても、いけない場合もあります。
決して悪気はないのですが、このような会話によって周囲から誤解されたり、煙たがられたりする危険性が高いのです。周囲から人が離れていくと、コミュニケーションをとる機会が他のお子さんと比べて少なくなります。
他人と会話をする機会が減るので、コミュニケーション能力も身につきません。うまく自分の意志や思いを伝えられなくなるために、他人と会話することに苦手意識を持つようになり、さらに孤立していく……。というような負のスパイラルに陥りやすいのです。
*****************************
鈴木 直光
筑波こどものこころクリニック院長・小児科医
小児神経学会認定医博士(医学)