就職氷河期世代には、新卒時に無職、または非正規雇用となった後、現在でも新たな正規雇用や正規への雇用転換を果たせていない人が少なくない。もっとも、正規雇用においても、かつての正社員と比べて環境は厳しくなっている。日本総合研究所・主任研究員の下田裕介氏が就職氷河期世代の実情について解説していく。 ※本記事は、書籍『就職氷河期世代の行く先』(日本経済新聞出版)より一部を抜粋・再編集したものです。
「勝ち組になれない」氷河期世代…正社員の間でみられる“世代間格差” (※写真はイメージです/PIXTA)

「配偶者の収入は増えた」が「脆弱な世帯収入」

こうしたなか、配偶者の収入をみると、世帯主の収入とは対照的に、上の世代よりも増えている。

 

これは、かつてと比べて共働き世帯が増えたこと、また、アベノミクス始動後に顕著となった人手不足の高まりを受けて、配偶者の主な雇用形態とみられるパートタイムなどでは処遇が以前よりも改善したことなどが背景にある。

 

人手不足感が強まっていた頃には、近くのスーパーなどのパート・アルバイト募集の時給欄をみて数年前よりも上がっていると実感した人も多いのではないだろうか。

 

もっとも、配偶者の収入が上の世代よりも増えたとはいえ、増加幅は限定的である。

 

例えば、40代前半において、団塊ジュニア世代やポスト団塊ジュニア世代(前期)の収入は、上の世代と比べて1万〜2万円強、40代後半においても、団塊ジュニア世代の収入は、上の世代と比べて1万円台半ば〜2万円台半ばほど増えている。

 

その結果、夫婦の収入を合わせた世帯の勤め先収入は、上の世代とのかい離がやや縮小したといえる。しかし、それは世帯主の収入減を、パートタイムなど非正規雇用で働く配偶者の収入増で支える形となっており、上の世代の同じ年齢階級の時と比べて脆弱だ。

 

実際に、新型コロナ禍以降は、女性の非正規雇用を中心に職を失うケースが増えていることから、配偶者収入による下支えが見込めず、世帯の勤め先収入には下押し圧力がかかっているとみられる。

 

このように、正社員や共働きは収入の面でメリットはあるものの、かつてのような勝ち組とまではいえなくなっているのである。

 

 

下田 裕介

株式会社日本総合研究所 調査部 主任研究員