「地理上の要地にある島国」という点で共通する両国
このコラムでは、まだまだスリランカとシンガポールを比較するには早いかもしれない、としながらも、地理上の要地にある島国という点で似通っているシンガポールとスリランカの直近情勢を比べ、「スリランカは次代のシンガポールになり得る」という意見を提示しています。そこで述べられているスリランカの最新事情と将来展望は下記のようなものです。
1.世界規模での東西を結ぶシーレーンに面した、物流拠点の位置を占めている。ヨーロッパおよび中東から東アジアに向かう、すべての石油タンカーやコンテナ船は、スリランカ南端から数キロのところを通らなくてはならない。スリランカは、この戦略的な地の利を活かして、南端のハンバントタ港とコロンボの港を拡張する計画である。
2.コロンボと南部の観光地および国際空港を結ぶ新しい高速道路が完成。さらに、コロンボと北部、東部を結ぶ高速道路も計画されている。
3.新たに2箇所の火力発電所(合計出力900メガワット)と出力150メガワットの水力発電所を造り、電気供給力を補強した。
4.コロンボ中心地から臨海地域にかけての450エーカーを再開発し、コロンボ港湾都市を建設しようという、150億ドル規模のプロジェクトが進んでいる。
5.新しいホテルの供給に裏づけされた、大きな潜在能力が観光産業にはある。国際的なブランドを持つホテルが進出をしており、たとえばシャングリラホテルは2つのホテルで計800室を建設中、ハイアットは550室のホテルを開業し、マリオットは200室のホテルを、クラウンカジノは450室の総合リゾートホテルをオープンする(ほかにもジョン・キールスは800室のカジノホテルを建設する)。
しかし、これはスリランカの観光産業の一部にしか過ぎず、より多くの部分はブティックホテルやヴィラホテルのような、もっとローカルで地域的なブランドによって占められている。旅行者の数は毎年20パーセント増加しており、フラッグキャリアのスリランカ航空はワン・ワールド連合に最近加盟を果たした。またコロンボの国際空港は機能拡張中であり、南部の国際窓口もオープンしたばかりである。
6.スリランカは世界第二位の紅茶輸出国であり、また世界第四位の生産国でもある。海岸地帯の熱帯気候から山岳地域の涼しいところまで気候の幅があるため、様々な種類の農作物が生産可能である。
7.スリランカは天然資源に恵まれている。鉱物では、北部の鉱物砂や、グラファイトとして知られる新しいナノ素材を作るのに欠かせない黒鉛の大きなフレークから、世界でもっとも艶があり透明度が高いと言われるサファイアをはじめとする様々な宝石まで採れる。ちなみにスリランカのサファイアは、元はダイアナ妃のものであったケイト・ミッドルトンの婚約指輪で有名になった。
8.スリランカ沖合では石油およびガス層が見つかっており、その調査と生産が期待されている。
9.コストの安い縫製産業が残っている一方で、高価格なソフトウェアや業務プロセス産業が急拡大しており、輸出収入の規模は、2007年の2億ドルから2013年には6億ドルまで増え、2030年には20億ドルにまで増加させることを目指している。
国際的な投資対象としても今後は注目
この記事では、スリランカの投資環境についても言及しています。自由放任主義を採るシンガポールに比べ、スリランカは「まだ資本投下をするには難しい場所」としつつも、コロンボ証券市場では外国人投資家が52億ルピー(4000万ドル)買い越していると述べています。
いわゆる「スリランカファンド」もいくつか存在しますが、ETFなどは存在せず、ポートフォリオに「スリランカ」を組み込むことには、まだ困難が多いとも述べています。その一方で、急速に発展しているスリランカの現状と潜在能力を考慮すると、不動産への直接投資や、観光、エネルギー、農業、工業への戦略的な投資、そしてプライベート・エクイティへの投資などは、国際的な投資対象として今後注目されるであろう、としており、これまでの50年でシンガポールに起こったことは、次の50年にスリランカで起こらないとは言えないと結んでいます。