キャリアコンサルティングとしての豊富な実務経験を持つ中山てつや氏は、著書『なぜ職場では理不尽なことが起こるのか?』のなかで、古き日本の職場における諸問題について語っています。
「結婚すると、給料が増える」という現実を見て…職場の理不尽 (※写真はイメージです/PIXTA)

新卒の初任給が…「年功序列型賃金制度」の弊害

今度は、バブル真っ盛りの頃の話です。当時は、新卒社員の基本給が、うなぎ上りで上昇していました(ちなみに、今の新卒の初任給は、この頃に形成されたものです)。

 

そんなある日、本社から通達を受け取ることになります。内容を要約すると、 

 

・新入社員の初任給相場が高騰している。 
・人材確保の観点から、新卒の基本給を上げざるを得ない。 
・それに伴い、ベテラン社員の基本給も上げる必要がある。 
・このペースでいくと、年功序列型の賃金体系が維持できなくなる。 
・そこで、○年新卒入社組の基本給を1年間据え置くこととする。

 

といった感じでした。

 

早い話が、同期一同、給与据え置きの連絡です。バブル真っ盛りの時代に、普通であれば、思いっきり上がってもおかしくないはずの給料が、何と1年もの間据え置きになるとは、予想すらできませんでした。

 

年功序列型賃金制度の弊害を、垣間見た瞬間です。こちらも余談ですが、同じタイミングで、営業目標も、大幅に増えてしまいます。

 

ただでさえ高いと感じていた目標が、世の中のペースと連動するがごとく、底上げされました。確かに、商品は凄まじい勢いで売れていましたが、その分、日々の業務も多忙を極めていました。

 

「1枚の表彰状」が、唯一の救いだったと記憶しています。バブル時代の思い出は、こと仕事に関しては、いいことばかりではありませんでした。

昇格しても基本給が変わらない!?その理由は…

今度は、課長職に昇格した時の話です。初めて手にした給与明細を、ワクワクしながら開けてみました。すると、基本給が変わっていません。以前と同じで、当然のことながら手取りにも変わりがありません。

 

「これはどうしたことか」と調べてみると、「会社の制度上、昇格しても基本給は変わらないが、ボーナスがそれなりに増える」仕組みであることを知りました。

 

年功序列型の報酬制度の本質は、勤続年数にあるので、基本給もおのずと「職責ではなく、勤続年数に依存する」というわけです。あらかじめ認識していればよかったのですが、あいにく無関心だったため、ショックを受けたことを覚えています。

 

こちらも、年功序列の「成せる業」というべきでしょうか。

 

 

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中山てつや

1956年、東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。日系製造メーカー及び外資系IT企業を経て、主にグローバル人材を対象としたキャリアコンサルティングの仕事に携わる。