新型コロナウイルス感染拡大の影響で、教育現場ではリモート授業の導入が進んでいます。本記事では、慶應義塾普通部、東京海洋大学、早稲田大学等で非常勤講師をしながら「海外教育」の研究を続ける、本柳とみ子氏の著書『日本人教師が見たオーストラリアの学校 コアラの国の教育レシピ』より一部を抜粋・再編集し、コロナ禍以前からリモート授業を積極的に取り入れていた、教育先進国である「オーストラリア」の教育現場について紹介していきます。
「冗談でしょう!」オーストラリアの教師が驚愕した日本の学校事情【教育学博士の実録】 (※写真はイメージです/PIXTA)

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放課後すぐに静まり返る「オーストラリア」の学校

日本の学校は、授業が終わっても生徒がたくさん残っている。部活動や委員会活動があるからだ。放課後の教室で友達と過ごす生徒もいる。「用のない生徒は早く帰りましょう」という校内放送も聞き流しておしゃべりを続ける生徒たち。学校が放課後の生徒の居場所になっている例は少なくない。

 

オーストラリアの学校には部活動がない。委員会活動もほとんどない。帰りのホームルームや掃除もやらない。授業が終わると生徒は一斉に下校する。迎えに来た保護者の車やスクールバスに乗り込み、さっといなくなるので、あっという間に校内は静まり返る。

 

そして、生徒が帰ると先生も帰る。

オーストラリア留学生が日本の中学校に来て驚いたワケ

「オーストラリアの学校はどうしてこんなにごみが多いのだろう」と思うことがある。特に、放課後はあちこちにごみが散乱している。地面に落ちたパンくずをアイビス(トキの仲間でオーストラリアではよく見られる)がついばんでいる。屋外に食べ物が散らかっているのは外で飲食するからだろう。

 

汚したら、掃除をしてきれいにすればよい。でも、オーストラリアの生徒は掃除をしない。誰が掃除をするかというと、クリーナーとかジャニターと呼ばれる清掃員の人たちだ。早朝や夕方、大きな機械を使ってごみを集めている。

 

生徒が掃除をしないのは、彼らの仕事を奪うことになるからだと言う人がいる。子どもに掃除をさせるなんてとんでもないと言う人もいる。トイレの掃除などあり得ないそうだ。

 

日本に来たオーストラリアの中学生を、勤務先の学校に案内したことがある。いちばん興味を持ったのが、放課後の掃除だった。学校で掃除をするのは初めてだと言っていた。和帚を珍しがっていた。雑巾掛けも楽しそうにやっていた。トイレを掃除する生徒たちを見て目を丸くしていた。

オーストラリアの生徒は日本の生徒よりごみに無頓着

オーストラリアの生徒は日本の生徒よりごみに無頓着な気がする。教師もそれほど厳しく言わない。もちろん、日本でもごみを投げ捨てる生徒はいる。だが、見つかれば注意される。日本の先生はごみにはとてもうるさい。だから生徒はごみを散らかすことはいけないことだとわかっている。

 

オーストラリアでは、ごみの投げ捨てをいけないことだと思う生徒が少ないように見える。ごみが落ちていても気にする様子があまりない。落ちているごみを拾う生徒も見たことがない。自分たちが汚しても、清掃員がきれいにしてくれるという意識がどこかにあるのだろうか。役割分担の意識だが、私には何となく違和感がある。諸外国の中には日本の学校の清掃活動に注目する国があるようだ。でも、オーストラリアでは議論にもならない。