ブロックチェーン活用で「不動産登記」の効率化を
旧態依然の不動産登記システムを便利で効率的に変える近道は、やはり「オンライン化」でしょう。具体的なアイディアとしては、仮想通貨の世界で採用されている「ブロックチェーン(分散型台帳)」の活用です。ブロックチェーンとは、歴代のデータ(ブロック)が、時系列で、次々と鎖(チェーン)のように繋がっていくデータ保存の仕組みをいいます。
では、不動産登記におけるブロックチェーンの活用手段とはどのようなものなのでしょうか。
たとえば、建物の登記情報なら、1つ目のブロックには「〇〇年〇〇月〇〇日、Aさん所有の土地に建物が新築された」というデータが記録されます。次に「Aさんが土地と建物をBさんへ売却」というデータのブロックが連なり、3つ目には「Bさんが死去したため、土地・建物はCさんが相続」と続いていきます。
ブロックに記録される登記情報は、Aさん、Bさん、Cさんら当事者が、自らのパソコン端末から法務局の専用サイトにアクセスして登録します。法務局は登録内容に虚偽や誤りがないことを確認したうえで登記情報を一般公開します。
データ登録には当事者本人であることを示す「シークレットキー(=登記識別情報に代わる暗証番号)」が必要で、その際、故意に登録対象以外のブロック(=過去の情報)を故意に書き換え(=改ざん)すると、情報の不一致が他のブロックに連鎖して全体的な歪みが発生し、管理者(法務局)の知るところとなります。ブロックチェーンは、この情報の連鎖とシークレットキーによって第三者からのデータ改ざんから重要データを守る仕組みなのです。
ブロックチェーン登記で「特記事項」をもれなく記録
ある中古マンションの売買取引で、買主が引渡しを受けたあとに過去の雨漏り跡を発見した事例があります。その雨漏りは、今回の売主よりさらに以前の所有者が修繕しており、売主自身は雨漏りやその修繕についてまったく知らされていませんでした。この場合、売主は知らなかったにもかかわらず「契約不適合責任」を負わされてしまいます。
このような不本意な事態に巻き込まれないためにも、ブロックチェーンでの登記にプラスαの情報として、過去その不動産に起きた不具合や瑕疵についても記録しておく必要があるのではないでしょうか。
雨漏りをはじめとする物件固有の瑕疵情報は、売買契約書や重要事項説明書の文末にある「特記事項」欄に記載されます。特記事項は売買取引毎に仲介担当の不動産会社が記載するため、過去に発生したものの現在は確認できない瑕疵は記載しない、すなわち瑕疵情報が引き継がれないことがほとんどです。
一戸の中古マンションが転売され続け、転売のたびに異なる不動産会社が仲介に入ると、昔あった瑕疵情報はいつしか特記事項から消えてしまいます。雨漏りのみならず、室内のリフォーム履歴、床下配管のメンテナンス時期、給湯器やエアコンの取り付け時期などの情報も引き継がれれば、売主の契約不適合責任リスクは低く抑えられます。
マンションなどの共用部に関しても、大規模修繕の実施状況や、管理委託会社の変更時期とその理由、管理費・修繕積立金の金額改定時期とその理由、ゴミ置場火災、エレベーター事故などといった情報も記録されれば、買主も諸々吟味して購入を検討することが出来ます。
とはいえ、ブロックチェーンは未だ開発途上であり、今後どのような業界で、どのように利用されるのかも未知数です。今後のさらなる活用が期待されます。
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