経済的な自立が難しく、親元を離れることができないケースも多い就職氷河期世代。同世代の年長者である団塊ジュニア世代には、まもなく親の介護と、それに伴う「生活困窮者」の増加が始まろうとしている。今後就職氷河期世代が直面する問題について、日本総合研究所・主任研究員の下田裕介氏が指摘していく。 ※本記事は、書籍『就職氷河期世代の行く先』(日本経済新聞出版)より一部を抜粋・再編集したものです。
氷河期世代・111万人に迫る苦難「親の介護スタート」に崩壊の足音 (※写真はイメージです/PIXTA)

親の介護で生活不安定に陥る団塊ジュニアは「33万人」

では実際に、前回でも触れた将来親の介護が必要となった場合に生活が困窮するリスクが高い人はどれほどいるだろうか。ここでは、「親に支えられる」から「親を支える」立場に変わる可能性が高い人を「生活不安定者」として試算してみた。

 

まず、総務省「国勢調査」から、世代に相当する年齢層における、未婚で親と同居する就業者と非就業者をそれぞれ抽出した。次に、就業者に対しては、総務省「労働力調査」から、就業者における非正規雇用者の割合を掛けて、親と同居する非正規雇用者とした。

 

ちなみに、労働力調査では、親の同居別に非正規雇用者の割合を公表していない。そのため、「親と同居する就業者は経済的に厳しいから」という考え方からすれば、親と同居する就業者に対する非正規雇用者の割合は、就業者全体に対する割合よりも高いことも考えられる点には留意が必要である。

 

一方で、同居する親が老後に備えて十分な資産を持っていれば、生活不安定に陥るリスクは低くなると考えられる。そうしたケースを除くため、金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」などから、親が老後の生活について「心配である」と回答した割合を、前述の親と同居する非正規雇用者と非就業者にそれぞれ掛け合わせた。すなわち、老後の生活を心配する親と同居する未婚の非正規雇用者または非就業者を「生活不安定者」として試算している。

 

では、実際に試算結果をみてみよう。就職氷河期世代の年長者である団塊ジュニア世代における生活不安定者は、2015年時点で、男性が13.5万人、女性が19.9万人、男女合わせて33.4万人にのぼると試算される。

 

一体、この数字はどれぐらいのインパクトを示すものなのだろうか。そこで、就職氷河期世代よりも上の世代である、新人類(後期)、バブル世代との比較からみてみる。前述の団塊ジュニア世代の試算値は2015年時点、すなわち41〜44歳時にあたるため、上の世代が同様の年齢時に生活不安定者がそれぞれどの程度いるかを試算した。