「1年に生まれた子どもの数」よりも多い氷河期世代の生活不安定者
その結果を示したものが[図表1]である。
これをみると、バブル世代の同年齢時(2010年時点)における生活不安定者は、男性が13.6万人、女性が18.2万人、男女合わせて31.8万人と試算される。同様に、新人類(後期)の同年齢時(2005年時点)における生活不安定者は男性が8.6万人、女性が10.8万人、男女合わせて19.4万人と試算される。
ここで留意すべきなのは、団塊ジュニア世代は、バブル世代、新人類(後期)よりも該当する年齢階級が少ない。前述の試算値は、団塊ジュニア世代の試算の年齢時期を41~44歳時(2015年時点)とする一方、バブル世代や新人類(後期)の試算の年齢時期は41~45歳時(それぞれ2010年時点、2005年時点)となる。
つまり、団塊ジュニア世代は世代数が1歳分少ないにもかかわらず、生活不安定者と推計される人数が多い。なお、[図表1]では41~45歳時の比較として、団塊ジュニア世代についても、試算の対象となる2015年時点で同世代には含まれない45歳の生活不安者も、参考までに合わせて示している。
もっとも、団塊ジュニア世代は該当する年齢階級が少ないとしても、そもそも人口ボリュームを抱えているのだから、その分多くなると考えることもできる。
そこで、それぞれの世代の人口全体に占める生活不安定者数の割合をみると、男性では、団塊ジュニア世代が3.4%、バブル世代が3.1%、新人類(後期)が2.2%、女性では、団塊ジュニア世代が5.1%、バブル世代が4.2%、新人類(後期)が2.8%となっている。
こうした状況を踏まえれば、団塊ジュニア世代の、親の介護による生活への影響は他の世代と比べて相当大きいといえる。ちなみに、就職氷河期世代全体における生活不安定者を同様に試算すると、およそ111万人にのぼる。
これは、近年の出生数よりも多い数である。
一方で、非正規雇用ではあるが親と同居せずに自立した生活を送っている、正規雇用として働いているなど、試算の対象から外れる就職氷河期世代にとっても、親の介護問題は他人事ではない。賃金は非正規雇用では低く、また、正規雇用でも上の世代と比べて伸び悩んでいるからである。
さらに、総務省「社会生活基本調査」によれば、介護をしている人の仕事時間は介護をしていない人と比べて、男性ではほぼ同じであるほか、女性においても8割程度となっており、介護と仕事を両立する姿がみてとれる([図表2])。
こうした状況下、就職氷河期世代はきょうだい数が少なく未婚者が多いことから、一人にかかる親の介護の時間的負担の増大が懸念される。親の介護が現実となれば、実際の介護方法によって状況は異なるが、仕事を辞めざるを得なくなるなどして、結果として経済的負担が重くのしかかる恐れも出てくる。
下田 裕介
株式会社日本総合研究所 調査部 主任研究員