トルコ航空:エアラインクレジット分析(2021年第2四半期) (※写真はイメージです/PIXTA)

航空機ファイナンス市場における最新動向をはじめ、エアライン与信分析データ、機材鑑定評価、航空機材取引価格データ、オーダーメイドアドバイザリーサービス、航空機投資イベントを提供する世界的企業、Ishkaが提供するエアラインクレジット分析です。今回は、トルコ航空(2021年第2四半期作成)について分析します。

2021年 Ishka View

 財務(Financial)

財務の健全性は安定的、QRでコントール可能な状態

 

 輸送の成長力(Traffic Growth)

航空会社の期待される輸送の成長力は減退

 

 イールド(Yields)

旅客1人に対する1km当たりの収入単価は、減退

 

 マクロ経済指標 

航空会社の拠点における全体的なマクロ経済状況は安定的

 

 競争環境(Competition)

航空会社の重要市場における競争的環境とその市場における相対的位置(安定性)。市場に単一支配的航空会社はなく、非常に競争は激しい

 

 

 

色コードは、現在を意味するのではなく、将来のポジションに関する当社の見解を表しています。

Ishka Credit Score(Ishka信用スコア)

Source: Ishka calculations and airline financial statements
Source: Ishka calculations and airline financial statements

トルコ航空

トルコ航空(Turkish Airlines、以下、THYと表記)の2020年度の総合スコアは、見込みベースの数値と、流動性やEBITDARなどにかかる調整値に基づきます。2020年度には、ほとんどの航空会社のEBITDARはマイナスとなったため、EBITDARに基づく財務比率は意味を持ちえません。したがって、Ishkaは、航空会社の財務上の義務を果たす能力を、主に、利用可能な流動性と、主要な短期および長期の契約にもとづく(負債およびリース契約を含む)追加的な資金調達能力などに基づいて評価しました。ほとんどの航空会社の資本の状況も悪化していますが、一部の航空会社は株式の発行と負債のバランスをとることで悪化の影響を抑えこむことができました。総合的なスコアの計算にも同様のことを織り込んでいます。

 

コロナウイルス(以下、COVID-19)の大規模で突然の流行は依然として進行中であり、その影響の大きさを測ることは困難です。Ishkaスコアの予測は、コロナ感染の発生が長期化した場合や、その後の大きな感染の波によって回復が妨げられた場合に変化する可能性があります。当社は、航空会社の過去の業績、一般的および財務的な見通し、全体的な市況、および入手可能な場合はマーケットのコンセンサス予想を組み合わせて、2021年度の先行きを展望した(フォワードルッキングな)Ishkaスコアを推定。また、2021年度の見通しには、航空会社のソブリン・オーナーシップと地域経済における航空会社の戦略的重要性を反映しています。Ishka Credit Scoreと2021年のIshka Viewに関する説明は、Ishkaのアプローチとメソドロジーをご参照ください。2019年度以降の財務数値や比率の多くは、IFRS第16号「リース」の適用に伴う会計処理の変更により影響を受けています。したがって2019年以降の数値はそれ以前の年度の数値と直接比較することはできません。

 

Ishkaスコアカード 出所:エアラインの財務諸表とイシュカの計算に基づく 注:財務指標、運行指標は加重平均の手法を用いて、Ishkaスコアを導いている。2019年度以降の財務数値や比率の多くは、IFRS第16号「リース」の適用に伴う会計処理の変更により影響を受けている。したがって2019年以降の数値はそれ以前の年度の数値と直接比較することはできない。
Ishkaスコアカード
出所:エアラインの財務諸表とイシュカの計算に基づく
注 :財務指標、運行指標は加重平均の手法を用いて、Ishkaスコアを導いている。2019年度以降の財務数値や比率の多くは、IFRS第16号「リース」の適用に伴う会計処理の変更により影響を受けている。したがって2019年以降の数値はそれ以前の年度の数値と直接比較することはできない。

 

財務の要約 出所:エアラインの財務諸表とIshkaの計算に基づく
財務の要約
出所:エアラインの財務諸表とIshkaの計算に基づく

業績の評価(パフォーマンスレビュー)

COVID-19危機以前のTHYの財務実績は心強いものでした。前回の2016年の危機からうまく回復することができ、マクロ環境の回復に伴い、すべての主要な財務・経営指標において全面的に改善が見られました。2020年のCOVID-19危機に際しても、大規模な航空貨物事業のおかげで、旅客収入の低迷の一部を相殺することができました。その結果、EBITDARマージンは2019年と同程度の水準を維持し、営業キャッシュフローも年間でプラスを維持しました。

 

しかしながら、貨物部門が好調であったにもかかわらず、THYは世界の他の航空会社と同様に、パンデミックによる交通機関や業務の継続的な混乱の影響を受けやすく、そのため財務の健全性が悪化する可能性があります。

 

バランスシートの面では、2020年に借入が増加した結果、レバレッジが大幅に上昇。THYは借入金のみで資金調達を行い、株式の発行は行っていません。これは、主に過去10年間におけるTHYの急拡大に起因するもので、COVID-19危機以前からレバレッジはすでに高い水準にありました。THYは、多額の運転資金の赤字と多額の短期債務を抱えています。

インパクト・インテリジェンス

THYのCOVID-19危機における業績は、特にME3キャリア(中東の大手フルサービス航空会社で、エメレーツ、エティハド、カタールを指す)や他の欧州ネットワークキャリアなどの国際的なライバルと比較すると、非常に力強いものでした。ライバル社の多くはCOVID-19の結果、EBITDARは赤字の状態に陥りました。THYは、好調な貨物収入、コスト削減策、支払時期の延期などにより、2020年には2019年のEBITDAR水準での収益性をほぼ維持することができました。THYは、約18機の自社貨物専用機に加え、7機のウェットリース機を貨物用に運航し、大規模な航空貨物事業を展開しています。また、全社的な給与削減を実行し、レイオフは行わず、他の航空会社の多くが2020年に計上した大規模な減損やリストラ費用を計上せずに2020年を終えることができました。また、営業キャッシュフローも通期でプラスを維持しました。

 

売上高は、旅客数が前年同期比で62%減少したことを背景に、前年同期比49%減の67億米ドルとなりました。主な収益源のひとつである国際線から国際線への乗り継ぎ客は、2020年には前年比71%減となりました。しかし、旅客収入が前年同期比66%減となった一方で、貨物事業が前年同期比61%増となり、総収入の40%(27億米ドル)を占めるまで伸び、2019年の13%を大幅に上回ったことが救いとなりました。同社は、ASKベースで60%少ないキャパシティとなり、搭乗率は2019年の82%から2020年には71%へと11ポイント減少。2019年の純利益が7億8,800万米ドルであったのに対し、2020年には8億3,600万米ドルの純損失を計上しました。

 

バランスシートについては、COVID-19の危機の影響の大きさにもかかわらず、対前年比でみて、大きな変化はありませんでした。市場から直接現金を借り入れることができ、また、損失額は大きかったものの、海外の同業他社に比べて損失額は比較的少額であったため、エクイティポジションへの絶対額ベースでの影響は限定的でした(資本勘定は2019年の69億米ドルから2020年には53億米ドルに減少)。しかし、借入を増加させたことで、2020年末には資本構造のギアリングは上昇しています。

 

トルコのソブリン・ウェルス・ファンドが株式の49%を所有するフラッグ・キャリアである同社は、税制上の優遇措置やその他の「短期的な」政府支援を受けていますが、欧州および中東諸国の政府の多くが行っているような直接的な資金援助は受けませんでした。現在、なんらかの金融支援のための話し合いが行われていると報道されていますが、最終的な決定はされていません。航空会社は、トルコの観光産業に欠かせない戦略的国有企業であり、この国のイメージと同義の存在であることから、トルコ政府は、当社が継続企業として存続できるようにしたいと考えていると思われます。

 

2020年に4四半期連続で赤字となったあと、歴史的に低調な第1四半期に純利益を計上するなど、2021年のスタートは好調でした。2020年第1四半期は3億2700万米ドルの赤字、危機以前の2019年第1四半期は2億2900万米ドルの赤字でありましたが、2021年第1四半期は6100万米ドルの純利益を記録しました。売上高は2019年第1四半期比で35%減の18億米ドルで、これは旅客輸送量が依然としてパンデミック前の水準よりも大幅に減少(61%)したためですが、貨物事業は2019年第1四半期比で103%増となり、収益の牽引役となりました。

 

同社はまた、他の航空会社よりもコストをうまくコントロールできているようで、EBITDAR段階でもパフォーマンスが改善しており、当四半期にはほぼパンデミック前のレベルのEBITDARマージンを再び計上しました。しかしながら、純利益は有利な為替変動(9,400万ドル)およびその他の一過性の利益(2,600万ドル)に助けられました。2021年第1四半期のキャッシュポジションは18億ドルで、これは2020年末および2019年末のキャッシュポジションと同程度であり、貨物事業からの健全なキャッシュフローに大きく支えられています。2021年第1四半期および2020年のほとんどの期間において、同社は営業活動からプラスの現金を得ることができましたが、2022年3月までに約42億ドルの債務およびリース料の支払いが予定されており、期末時点で21億ドルのかなり大きな運転資金の赤字が続いています。

 

2021年の残りの期間を展望すると、特にヨーロッパでのパンデミックに関する最近の動向を受けて、輸量の回復の程度には大きな疑問が残ります。トルコの国内航空輸送量は、2020年には順調に回復しましたが、2020年第4四半期以降は混乱をみせており、2021年度の最初の4カ月(1~4月間)はパンデミック前の2019年度に比べ、47%程度に留まっています。また、伝統的に、同社は国内線への依存度が低く、国際線のポイント・ツー・ポイントおよびコネクティング・トラフィック(乗り継ぎ便)への依存度が高いです。2019年には、旅客数の62%が国際線で、旅客・貨物収入の90%が国際線によるものでした。2020年には、国際線の旅客数がわずかに減少して全体の56%となったものの、基本的には国際線ネットワークで発生する貨物収入の増加が主な要因となり、国際線セグメントは依然として、当社の収益の91%を生み出しています。2021年度の第2四半期にはパンデミック前の2019年の約50~60%の旅客席の供給を予想しています。

 

※ データの詳細はAirline Credit Profilesを参照ください。

 

アナリスト
シッダルース・ナルケデ

 

Ishka アナリスト

Ishkaのアドバイザリーチームとして、航空会社の信用分析リポートやオーダーメイドの航空コンサルプロジェクトの開発を担当。航空会社の財務分析と事業戦略分析を得意とし、多くのグローバルな新聞、業界紙にデータの解説などを提供している。

※ Ishkaは、グローバルな航空ファイナンスコミュニティに向けて、エアライン与信分析データ、機材鑑定評価、航空機材取引価格データ、オーダーメイドのアドバイザリーサービス、航空機投資イベントを提供しています。

ishka問い合わせ先
ウェブサイト:www.ishkaglobal.com
メール:team@Ishkaglobal.com

著者紹介

連載Ishka【エアラインクレジット分析リポート】

注:本記事は英語にて発行されており、日本語翻訳はあくまで参照です。この日本語版は、読者のご理解の参考までに作成したものであり、英語版記事の補助的なものであるため、英語版が(正)となります旨、ご了承ください。

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