カタール航空:エアラインクレジット分析(2021年第2四半期) (※写真はイメージです/PIXTA)

航空機ファイナンス市場における最新動向をはじめ、エアライン与信分析データ、機材鑑定評価、航空機材取引価格データ、オーダーメイドアドバイザリーサービス、航空機投資イベントを提供する世界的企業、Ishkaが提供するエアラインクレジット分析です。今回は、カタール航空(2021年第2四半期作成)について分析します。

2021年 Ishka View

 

 

色コードは、現在を意味するのではなく、将来のポジションに関する当社の見解を表しています。

 

 財務(Financial)

財務の健全性は安定的、QRでコントール可能な状態

 

 輸送の成長力(Traffic Growth)

航空会社の期待される輸送の成長力は減退

 

 イールド(Yields)

旅客1人に対する1km当たりの収入単価は、減退

 

 マクロ経済指標

航空会社の拠点における全体的なマクロ経済状況は安定的

 

 競争環境(Competition)

航空会社の重要市場における競争的環境とその市場における相対的位置(安定性)。市場に単一支配的航空会社はなく、非常に競争は激しい

 

会社の財務諸表とIshkaによる計算結果

B:投機的格付け

上記スコアは、パフォーマンスの方向性を示すことを目的としており、デフォルトや倒産の予測を目的とするものではありません。

財務サマリー(Financial Summary)

(会社の財務諸表と Ishka による計算結果) 注1)2021 年 6 月 18 日現在、2021 年 3 月期のアニュアルレポートは未公表である。 注2)Qatar 航空は、キャパシティの稼働データ(RPK、搭乗率)を公表していないため、RPK は、OAG のデータベースから推計値を使用。RPK に依存するイールド、搭乗率といった値は推計として参照され たい。 注3)財務数値、財務比率の多くは、IFRS16(リース会計)の 2020 年度からの適用により影響を受けて おり、過去の数値と 2020 年度以降の数値の比較可能性は限定されている。2019 年度の数値は 2020 年度 決算発表時に IFRS16(リース会計)適用にあわせ、再表示されたもの。
会社の財務諸表とIshkaによる計算結果
注1)2021年6月18日現在、2021年3月期のアニュアルレポートは未公表である。
注2)Qatar航空は、キャパシティの稼働データ(RPK、搭乗率)を公表していないため、RPKは、OAGのデータベースから推計値を使用。RPKに依存するイールド、搭乗率といった値は推計として参照されたい。
注3)財務数値、財務比率の多くは、IFRS16(リース会計)の2020年度からの適用により影響を受けており、過去の数値と2020年度以降の数値の比較可能性は限定されている。2019年度の数値は2020年度決算発表時にIFRS16(リース会計)適用にあわせ、再表示されたもの。

財務パフォーマンス評価概要

Qatar航空(以下QRと表記)

 

近年の財務状況の悪化にもかかわらず、QRは中東地域隣国からの封鎖措置に耐性を示し、運送能力を他の地域に機敏に再配置することができました。また、強固な財政基盤を持つカタール政府から、有形、無形のサポートをうけていることは重要です。

 

しかし、政府サポートを除いてQR単独で見た場合、過去3から4年で、負債は増加する一方、マージンは縮小し、損失を計上しており、そのため航空会社の財務は弱体化しています。

 

QRが封鎖措置の為に取らなくてはならなかかった対応でコスト増を招き、当期赤字となりました。資産の売却、デリバティブや外国為替から相当な利益を計上したにもかかわらず。2020年3月期の運転資本の状況は大きくマイナスの値となりました。

 

(営業活動からの)オペレーティングキャシュフロー(営業キャシュフロー)は、2018年度に半減し、2019年度はマイナスとなり、2020年度に回復。重要なポイントとして、QRの資本構成は健全な状態で、コロナ渦を迎えており、しかも、負債は全額が外国為替建で、その90%は米ドル建ですが、通貨カタールレアル(Qatari riyal)は米ドルにペッグしており、外国為替変動リスクは限定的です。

コロナ禍におけるQRへの影響と同社の対応

「スーパーコネクター」としてQRのネットワークは地理的に優位なドーハをハブとし、東西を結ぶ長距離の国際線から構成されています。しかし、皆さんが御存知のように、新型コロナの世界的拡大が影響し、各国が海外からの入国に制限を課した影響を強く受けました。QRも、他エアライン同様に、定期運航ネットワークを縮小していますが、他社と異なることは、従来の路線の多くで運航を継続していることです。

 

2020年4-5月の新型コロナによる危機のピーク時、世界中で極めて限られた商業運航しかみられなかった時期に、QRは運航を停止しませんでした。OAGデータによると、QRは少なくとも危機前の運航便に対して10%以上を維持していました。

 

対照的に、最も類似した同業他社であるエミレーツは、2020年度第2四半期を通して、危機前の5%以下の運航でした。QRがエミレーツ航空よりもネットワークの縮小を軽度に留めて運航した2020年第2四半期は、QRの輸送量はエミレーツ航空を上回りました。

 

しかし、2020年残りの期間および2021年最初の2ヵ月間をみると、乗客数の回復は、このスーパーコネクター2社の間で大きな違いはありませんでした。OAGデータでは、2020年10月から2021年2月の間、どちらも危機以前の旅客数の20~30%の間となる水準の旅客を運航。QRは、旅客便の一部を主に貨物運搬目的で飛行させている可能性もあります。

 

2020年の間に、QRはペイロードベース(有償ベースで)で世界最大の貨物航空会社となりました。この航空会社は新型コロナ前から積極的に貨物サービスを拡大していましたが、2020年にはその成長がさらに加速。貨物便がホールドされ、貨物運送のキャパシティ不足と当初の医療用品の需要増、続いてはコロナワクチン輸送の需要が増加したことを利用し、QRは貨物機のキャパシティを大幅に増やしました。2021年3月には、危機以前と比較して約3倍の貨物機を運航していたと考えられます。同社の貨物事業の規模の大きさと2020年は貨物の収率(イールド)が大幅に上昇したことから、旅客事業が混乱しているときに、貨物事業が大きなキャッシュフローをもたらしたと思われます。しかし、このレポートの作成時点では、それが旅客事業の損失をどの程度相殺したかはわかりません。

 

また、3年前から続いている(中東地域隣国からの)旅行制限や空域制限が解除されることで、燃料費やルート変更の追加的費用を節約することができます。2020年後半から2021年前半にかけて、カタールはサウジアラビア、バーレーン、エジプト、アラブ首長国連邦(UAE)と合意に至り、貿易・経済封鎖に終止符が打たれました。これにより、QRはアラブ4カ国の領空を飛ぶことができるようになりました。QRは2020年7月に、少なくとも50億米ドルの損害賠償を求めて前記4カ国を提訴しています。一部の報道によると、QRは今回の合意により、この訴訟を取り下げたと見られています。

 

QRは非上場企業であるため、2020年の会計年度末以降の財務活動や財務実績に関する詳細は限られています。直近の会計年度(2021年3月31日まで)の監査済み年次財務諸表はまだ公表されていません。しかし、重要な国有企業である同社は、カタール政府からの支援をすでに受けており、今後も必要に応じて支援を受けることが予想されます。2020年9月、同社は、カタール国から73億カタールリヤル(約20億米ドル)の支援を受けていることを明らかにしました。また、QRの長年にわたる融資パートナーであるスタンダードチャータード銀行と8億5000万米ドルの融資契約を2020年4月初めに締結しています。

 

新型コロナの混乱で、多くの航空会社は大きな下方圧力を受けています。その中で、QRは、同社の政策投資先である航空会社の資本増強策に、多大な貢献をしています。ATAMグループは、同社が約10%の株式を保有する航空会社で、2020年5月に米国連邦破産法第11条(チャプター11)の適用を申請しました。その再建を支援するため、大株主数社とQRは、約7億5,000万米ドルの緊急資金援助を行いました。QRは、キャセイパシフィック航空の10%の株式も保有しています。キャセイパシフィック航空は、2020年後半に50億米ドルの資本再編を実施し、その大部分を香港政府が出資しました。しかし、QRは、キャセイパシフィック航空の他の主要株主であるスワイヤー・パシフィック社並びに中国国際航空とともに、香港ドル117億ドル(15億米ドル)の株主割当増資に参加し、あわせて85%の引き受けを行いました。

 

QRはまた、IAGが2020年後半に実施した27.4億ユーロ(32億米ドル)の株主割当増資にも、保有する株式保有割合に応じて参加しました。カタールのフラッグキャリアであるQRが、BA、Iberia、Vueling、AerLingus、LEVELを所有する航空会社グループであるIAGの最大の単独株主となります。2020年2月、QRはIAGへの出資比率を21.4%から25.1%に引き上げ、それは、プレスリリース日の終値で計算すると4億6,500万ポンド(約6億米ドル)の投資に相当します。

 

また、QRは、経済成長が著しい国の航空会社であるルワンダ航空の49%の株式を取得する交渉を行っているとも報じられています。2020年の初めには、ルワンダの新しい空港(BugeseraInternationalAirport)の18億ドルの持ち分となる60%に投資することにも合意しています。

 

新型コロナ以前から、中東湾岸地域を経由する航空輸送は、主に地政学的な問題のために厳しい状況にありました。この地域の主要な競合会社であるエミレーツ航空とエティハド航空においては、成長が鈍化しており、2社が成長率の見直しと調整をしている間、QRは野心的な成長戦略を継続して推進し、いくつかの新造となる航空機の受領、多くの航空会社への投資、ネットワークの拡大を継続しています。これはQRにとってコストを伴う結果となり、QRの信用プロフィールは、コロナ危機以前では、世界の航空会社の中で最も急激に悪化した1社となりました。地域封鎖による路線網の調整コストの上昇、並びに、世界的に見て中東の国際線の成長率が低位な時期に、大量の航空機を購入した結果、収益の増加をコストが完全に上回りました。カタールのフラッグキャリアである同社は、近年、収益とコストの間のアンバランス(ミスマッチ)が最悪の状態であったと思われます。

 

しかし、このような困難な状況にもかかわらず、QRはカタール政府の暗黙のサポートの恩恵によって、ほぼ通常通りに業務を行っています。QRは、カタール政府およびカタール経済にとって重要な戦略的資産です。カタール航空グループは、航空会社の運営以外にも、いくつかの航空関連事業からなる大きな組織であり、その中には、世界最大の航空貨物事業、ドーハにあるハマド国際空港などが含まれます。歴史的に見ても、QRは多額の現金を蓄えており、近年、営業キャッシュフローがマイナスに転じたため、これを活用しました。また、セール・リースバックも大きな利益とキャッシュフローを生み出しています。

 

(注)セール・リースバックとは、売却したあとも借り続けることを条件に航空機資産をリース会社などに売却すること。

 

※ データの詳細はAirline Credit Profilesを参照ください。

 

アナリスト
シッダルース・ナルケデ

 

Ishka アナリスト

Ishkaのアドバイザリーチームとして、航空会社の信用分析リポートやオーダーメイドの航空コンサルプロジェクトの開発を担当。航空会社の財務分析と事業戦略分析を得意とし、多くのグローバルな新聞、業界紙にデータの解説などを提供している。

※ Ishkaは、グローバルな航空ファイナンスコミュニティに向けて、エアライン与信分析データ、機材鑑定評価、航空機材取引価格データ、オーダーメイドのアドバイザリーサービス、航空機投資イベントを提供しています。

ishka問い合わせ先
ウェブサイト:www.ishkaglobal.com
メール:team@Ishkaglobal.com

著者紹介

連載Ishka【エアラインクレジット分析リポート】

注:本記事は英語にて発行されており、日本語翻訳はあくまで参照です。この日本語版は、読者のご理解の参考までに作成したものであり、英語版記事の補助的なものであるため、英語版が(正)となります旨、ご了承ください。

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