今回は、遺族に自分の気持ちを伝える「エンディングノート」の活用法を見ていきます。※本連載は、弁護士・山下江氏の著書、『相続・遺言のポイント50』南々社)の中から一部を抜粋し、相続・遺言書の意外に知られていない、財産分与に関連のある法律についてわかりやすく解説します。

「エンディングノート」とは何か?

エンディングノートとは、人生の最期に備えて、生前に作成しておくノートのことです。今ではすっかり定着し、書店ではさまざまな種類のものがところ狭しと並んでいます。インターネットで無料でダウンロードできるものも増えてきました。

 

種類によって中身が異なりますが、主に、自分の経歴、家族やペットのこと、友人や知人のこと、病気や治療・介護のこと、自分の葬儀やお墓・法要のこと、自分の財産や負債、遺言のこと、家族などへのメッセージを自由に書き込めるようになっています(『相続・遺言のポイント50』のP146には、山下江法律事務所作成のエンディングノートの一部抜粋があります)。

 

[図表]エンディングノートのページの一例(山下江法律事務所作成)

遺族の無用な対立を防ぎ、遺恨を残さないために活かす

エンディングノートを書くことで、これまでの人生を振り返り、財産や負債も含めて自分の現状を整理できます。そして、書いた本人にもしものことがあったとき、その人の「気持ち(希望)」と「情報(財産状況や交友関係)」が分かれば残された家族の負担は大幅に軽減します。さらに、家族などの大切な方に感謝のメッセージを残すこともできます。自分のため、大切な家族のため、エンディングノートはすべての方にとって有効なツールといえます。

 

さまざまな可能性を秘めた「エンディングノート」ですが、遺言書としての法的効力はありません。例えば、「長男Aに、○○銀行の預金を相続させる」とエンディングノートに書いてあったとしても、それを根拠にAが預金の取得を主張することはできません。むしろ、中途半端な情報が「争族」の火種となることがあります。遺産の分け方については、遺言書の中で指定して初めて法的効力が認められます。

 

そのほか、遺言書でなければ法的効力のない項目は次のようなものがあります。「遺産分割の禁止」、「遺贈」、「遺言執行者の指定」、「推定相続人の廃除とその取消」、「子の認知」などです。

 

無用な対立を防ぎ、遺恨を残さないためにも、エンディングノートと遺言書を使い分けて両方準備しておくのが望ましいでしょう。

タイミングを決めて毎年メンテナンスを

エンディングノートは記入する項目が多く、すべてを埋めるのはなかなか骨の折れる作業です。少しずつ時間のあるときに書き足していくとよいでしょう。

 

しかし、一度完成したら終わり、というものではありません。

 

財産状況・交友関係はもちろんのこと、ご自身の希望も時とともに変化していきます。「誕生日」や「お正月」など、自分でタイミングを決めて毎年見返してメンテナンスをしておくとよいでしょう。

 

イラスト/momonga

 

◆まとめ◆

エンディングノートは自分にとっても残される家族にとっても有効なツール。しかし、法的効力はないので遺言書との使い分けが必要です。一度書いて終わりではなく定期的なメンテナンスを。

本連載は、2016年5月20日刊行の書籍『相続・遺言のポイント50』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続・遺言のポイント50

相続・遺言のポイント50

山下 江 編著

南々社

相続に関する法律は少々複雑であり、これらを直接読んで理解するのは困難です。しかし、相続は誰にでも発生する問題であり、誰もが理解しておくべき事柄だといえます。 相続の本の中で、一番わかりやすい内容を目指した本書は…

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