生活困窮者の相談に乗り、生活保護の申請を手助け、住まいを紹介するNPO法人・生活支援機構ALL。「困っている人は誰でも、門を叩いてほしい」と代表理事の坂本慎治氏は語るが――。 ※本連載では書籍『大阪に来たらええやん!西成のNPO法人代表が語る生活困窮者のリアル』(信長出版)より一部を抜粋・編集し、日本の悲惨な実態に迫っていく。
「警察署から呼ばれている。」家賃滞納男性が土下座…4人家族の壮絶 (※画像はイメージです/PIXTA)

「警察署から呼ばれている。ついてきてください」

「いきなり約束を破るのか。どういうことや!」。私が彼の家に駆けつけると、奥さんが玄関に出て対応します。しかし彼女は中国人。私の言っていることはよくわかりません。子どもは、鬼の形相の私を見て「ギャー」と泣き出します。

 

すると奥から、「すみませんでした……」と申し訳なさそうに彼が出てきました。

 

「すみませんでしたちゃうやろ。家賃払われへんなら払えそうにないって、まず連絡くれ。そのまま黙って、何の連絡もなしに払わへんってどういうことやねん」

 

私は思いの丈を彼にぶつけました。すると彼は「ぼく、元ヤクザなんです……」と打ち明けたのです。生活保護を受けないのも、決して「プライドの問題」ではなく、辞めたばかりで「足」がつくのが心配だったのだといいます。

 

話はわかりました。しかし、自分の名義でもろもろの契約ができない事情も汲み、できる限りの手助けをしたのに、それを踏みにじる行為をしたのは許せない。私が改めて「裏切られたのは悲しい」と告げると、彼は土下座をしながら謝ってきました。

 

それ以降、家賃の滞納はなくなったのですが、ある日、急に彼から電話がかかってきます。

 

「警察署から呼ばれている。一緒についてきてください」というのです。

 

聞けば、家賃の滞納をして私が叱ったときにはもう、奥さんのお腹の中には第2子がいたようです。その子がいざ産まれるとなり、救急車を呼んで近くの産婦人科に運んだが、金がない。子どもが産まれたその日のうちに奥さんと子どもを引き取って家に帰ったのですが、病院から警察に連絡がいき、呼ばれたとのことでした。