生活困窮者の相談に乗り、生活保護の申請を手助け、住まいを紹介するNPO法人・生活支援機構ALL。「困っている人は誰でも、門を叩いてほしい」と代表理事の坂本慎治氏は語るが――。 ※本連載では書籍『大阪に来たらええやん!西成のNPO法人代表が語る生活困窮者のリアル』(信長出版)より一部を抜粋・編集し、日本の悲惨な実態に迫っていく。
「警察署から呼ばれている。」家賃滞納男性が土下座…4人家族の壮絶 (※画像はイメージです/PIXTA)

「相談に乗りきれなかった」のはどんな人か

誰が相談にきてもいい。私はそう述べました。ただし正直に告白すれば、最後まで相談に乗りきれなかったことも、ゼロではありません。その事例をあえて、ここに記します。

 

ただ、逆にいえば「ここまで極端な事例でなければ、誰でも相談できる」ということでもあります。どちらかといえば「自分は相談に行っても大丈夫なんだ」と安心するために読み進めてください。

 

本記事で紹介するは、反社会的勢力だった男性の事例です。

 

我々の元に相談に訪れたとき、彼には中国人の奥さんと子どもがいました。しかし子どもは出生届を出していません。

 

男性は日雇いのアルバイトをしています。生活保護の受給を薦めましたが、「そんなものは受けない。住居さえ紹介してくれたら、家賃はしっかり払う」と聞き入れません。

 

そこで発覚した事実がひとつあります。彼は電気も水道も住居も「自分の名義で契約できない」ことです。過去に「何か」があるのです。でも話してみると、生活を再建するのだという強い意志を感じます。

 

私は「よし、わかった」と、当機構名義で電気や水道、住居の契約をすることを許可しました。料金はもちろん、その男性に請求する約束です。

 

しかし彼は、約束を破り、家賃を滞納しました。