「それが本題じゃないんです」…無念すぎる結末に
これではらちが明かない。私が「書類はもういいでしょう」と警察の方に提案すると、彼が警察に呼ばれたのはそれが本題ではないといいます。生まれたばかりの赤ちゃんの問題です。
彼は「病院には分割でもしっかり払う」と意思を告げました。しかし問題は「お金」だけではありません。出生届はどうするのか。
そもそも第1子も出生届を出していない。奥さんとの籍も入れていない。奥さんの国籍もはっきりしない。奥さんは不法滞在ではないのか……。
結局この話も、問い詰めるうちに彼がまた暴れ出したので、後日改めてという話になりました。
しかし彼と奥さんはその後、忽然と姿を消してしまいました。彼も奥さんも、いい年の大人ですから、どうにかして生きていくことはできるでしょう。心配なのは子どもです。学校にもいけません。その後、どのような生活を送っているのか……。
今でも気になります。最善を尽くしたとはいえ、最後まで相談に乗りきって、救うことができなかったのは事実。私の心にはいつまでも残り続けるエピソードとなっています。
坂本 慎治
NPO法人生活支援機構ALL 代表理事
大阪居住支援ネットワーク協議会 代表理事
株式会社ロキ 代表取締役
※本連載で紹介している事例はすべて、個人が特定されないよう変更されており、名前は仮名となっています。