生活困窮者の相談に乗り、生活保護の申請を手助け、住まいを紹介するNPO法人・生活支援機構ALL。「困っている人は誰でも、門を叩いてほしい」と代表理事の坂本慎治氏は語るが――。 ※本連載では書籍『大阪に来たらええやん!西成のNPO法人代表が語る生活困窮者のリアル』(信長出版)より一部を抜粋・編集し、日本の悲惨な実態に迫っていく。
「警察署から呼ばれている。」家賃滞納男性が土下座…4人家族の壮絶 (※画像はイメージです/PIXTA)

「離せコラ!」警察署で怒号…落ち着かせようとするが

私と一緒に警察に行くと、「坂本さんはここで待っていてください」と制され、彼だけが部屋の中に入っていきます。

 

ほどなく、中から「離せコラ!」と彼の声が聞こえてきます。取っ組み合いになっているふうでもなく、彼だけが一方的に暴れているようです。

 

「うわー。暴れてしまっているな。心証悪いな」と感じた私は、警察の方に「私が中に入ったら彼を落ち着かせることができますけど、どうでしょう」と提案しました。警察の方はすんなり受け入れてくれました。

 

「おいこら。警察署で何暴れとんねん。話聞かなアカンやろ」

 

私がたしなめると、彼は「こいつら、この紙にサインせぇと言う。でもおれがサインして帰った後でこいつら、絶対に何か書き足すに決まっている。絶対にサインしない」と言います。

 

その「紙」とは、「自分が反社会的勢力であり、ここの組の所属だった。しかしこれを機に破門してくれ。そして今後、一生、関わらないでくれ」という内容の書類でした。新しく人生をやり直そうとしている彼にとって、決してマイナスではない、むしろこれ以上なくありがたい書類です。

 

「お前アホやな。これ、めっちゃありがたい書類やで」

 

私は彼を落ち着かせようとしましたが、今度は「組を辞める、辞めないで警察の世話になんかなるか。警察の世話になるくらいなら死ぬ」と言い出します。どうやら警察嫌いの彼は、身辺をきれいにするにあたって警察のお世話になるのが耐えられなかった、ただそれだけのようなのです。