※画像はイメージです/PIXTA

「長男にすべての財産を相続させる」と公言していた母。しかし物忘れが多くなったことで、4人の相続人たちはまさかの「争族」へ…。※本記事は、一般社団法人相続終活専門協会の書籍 『プロが教える 相続でモメないための本』(アスコム)より一部を抜粋したものです。

母が「絶対に遺言を残す」と誓っていたワケ

■一次相続でもめた経験から、遺言を書く決心をした母

 

長男の太一さんが私の事務所を訪れたのは、お母さまが亡くなった後でした。結果論になりますが、もし「長男が遺言を偽造したのでは」とお母さまが言い出したタイミングでご相談いただいていれば、彼らは「争族」にならずにすんだかもしれない――そう思うと、私は残念でなりません。

 

日本では遺言を書く人は、亡くなった方の1割に過ぎません。初江さんは、遺される子どもたちへの心配りができる方だったといえます。

 

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「もちろん、母はそういう部分でしっかりした人だというのはおっしゃるとおりです。ですが、遺言を書くきっかけは父を亡くしたときの遺産相続でもめたからだと思います」

 

太一さんは、お父さまが亡くなったときのエピソードを話してくれました。太一さんのお父さまは、空調設備事業で会社を興し、30年かけて社員30名の堅実な事業に育て上げました。

 

ところがその後、60歳の若さで心臓発作による無念の他界。おそらくご本人も、これほど若くして亡くなるとは考えていなかったのでしょう。事業承継の準備もなく、もちろん遺言も書かれていませんでした。

 

このとき、会社の承継が最大の問題となりました。初江さんはご主人の会社の経理を担当していたこともあり、社内での人望も厚く、従業員や取引先から社長となって事業を承継してほしいと依頼されていたのです。

 

ところが、そこにご主人の弟さんや妹さんが現れて「この会社は自分が継ぐ!」と理不尽な主張をしてきたのです。この主導権争いは、一族を巻き込む大騒動に発展しました。結果的に、ご主人の弟妹は別会社を設立し、事業を分社化する形で決着しましたが……。

 

このときの「争族」の経験が、初江さんに「遺言がないと遺族がもめる」という認識を持たせたのです。

 

■会社はさらに発展し、長男が事業を引き継いだ

 

初江さんが社長になったことで社内の結束が高まり、事業はさらに発展。10年後には社員100名規模にまで成長を遂げました。

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江幡 吉昭

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