(※写真はイメージです/PIXTA)

本記事は、現役医師である中村重信氏、梶川博氏が、家族や医療従事者が知っておきたい認知症の症状、治療法を分かりやすく解説します。

記憶は「頭部外傷」「加齢」などがきっかけで失れる

頭部の打撲、海馬や視床の血管障害、アルコール症によるコルサコフ症候群などが代表的な記銘力障害です。アルツハイマー病なども、初期には新しい記憶のみが障害されます。

 

記銘力障害では即時記憶という1分程度の短い期間の記憶は保持され、1分を上回る短期記憶は失われることが多くなります。即時記憶障害や短期記憶障害の有無や程度は、たとえば数字や物品名の繰り返しによって検査できます。即時記憶は大部分(90%以上)が間もなく失われます。

 

人は頭部外傷などをきっかけにして記憶を失います。きっかけ以前のことを忘れる記憶障害を逆行性、それ以後のことを忘れるのを順行性と呼びます。ところで、明らかな原因もなく、急に記憶がなくなり、しばらくすると元に戻る一過性全健忘という病気があります。回復した後は異常がないため、認知症とは区別します。

 

健常高齢者でも新しいことを覚える記銘力が低下しますが、このことを流動性知能とも呼びます。漢字の記憶などは高齢者になっても減らないばかりか、かえって増えることもあります。これを結晶性知能と呼びます。若い人の流動性知能と高齢者の結晶性知能がうまくかみ合わせてより良い社会を作って行くことが大切です。

 

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中村 重信

京都市出身、1963年 京都大学医学部卒。1990~2002年広島大学医学部内科学第三教授、2002年~ 広島大学名誉教授/洛和会京都新薬開発支援センター所長(現在顧問)。2005年~ 公益社団法人「認知症の人と家族の会」顧問。主な著書:ぼけの診療室(紀伊国屋書店、1990)、痴呆疾患の診療ガイドライン(ワールドプランニング、2003)、老年医学への招待(南山堂、2010)、私たちは認知症にどう立ち向かっていけばよいのだろうか(南山堂、2013)受賞:日本認知症ケア学会・読売認知症ケア賞「功労賞」(2017)

 

梶川 博

広島県広島市出身。1957年修道高等学校卒業、1963年京都大学医学部卒。1964聖路加国際病院でインタ−ン修了、医師国家試験合格、アメリカ合衆国臨床医学留学のためのECFMG試験合格、1968年京都大学大学院修了(脳神経外科学)医学博士。1970年広島大学第二外科・脳神経外科(助手)、1975年大阪医科大学第一外科・脳神経外科(講師、助教授)。1976年ニューヨーク モンテフィオーレ病院神経病理学部門(平野朝雄教授)留学。1980年梶川脳神経外科病院(現医療法人翠清会・翠清会梶川病院、介護老人保健施設、地域包括支援センター)開設、現在会長。医学博士。1985年槇殿賞(広島医学会会頭表彰)、1996年日本医師会最高優功賞。日本脳神経外科学会認定専門医、日本脳卒中学会認定専門医、日本脳神経外科救急学会・日本神経学会・日本認知症学会会員、広島県難病指定医、広島県「もの忘れ・認知症相談医(オレンジドクター)、日本医師会&広島県医師会、日本医療法人協会&全日本病院協会広島県支部所属。 メールアドレス hkajikawa@suiseikai.jp

 

 

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本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『認知症の人が見る景色 正しい理解と寄り添う介護のために』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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