「ヘッジしきれないリスク」だってある
しかし、どうしてもヘッジしきれないリスクもあります。普通に1回の売買をするのならば、そこで支払う手数料や税金は、その1回分で済みます。
しかしリスクヘッジのために別の売買をすれば、さらにそこで手数料や税金が発生するのです。特に、空売りなどの信用取引をする場合は、より大きな諸費用が発生します(最初に挙げた例では、それらを考慮しませんでした)。
つまり、「ヘッジしきれないリスク」と書きましたが、その1つは、実はコストなのです。
また、信用取引も先物取引も取引時に証拠金が必要で、さらに損失が一定額以上になると、追加の証拠金を求められます。やはり現物取引とは違い、そもそものリスクが高い取引だといえるのです。
それらのことを考えると、いくらリスクヘッジをしようとしても、「ヘッジしきれないリスク」があるということを、投資家は知っておいた方がよいのではないでしょうか。
「そもそもリスクヘッジはしない」という考え方
また、広義では「分散投資」もリスクヘッジといえるかもしれません。それぞれの銘柄にはそれぞれ株価下落リスクがあるのだから、分散して投資しておけばそれをヘッジできる、というわけです。
しかしそれも踏まえると、リスクについては根本的に、以下のように考えることができるかもしれません。
「儲かりそうなところに大きく賭けることによって大きなリターンを得られるのだから、リスクヘッジをしていてはリターンも小さくなる」
「そもそもヘッジが必要なほどリスクのある投資は、しなければよい」
綿密な数学的計算をして、リスクヘッジをしながら大量の売買をして高リターンを上げる、というスタイルもあるでしょう。しかし運用資金の少ない個人投資家の場合、ある程度的を絞ってそこに資金を集中させる、というスタンスの方が効果的なようにも思えます。
もちろん、運用資金、投資に使える時間、知識など、投資家も人それぞれですから、投資スタイルに確固たる正解などはないのかもしれません。しかし、「そもそもリスクヘッジはしない」という考え方があることもまた、覚えておくとよいのではないでしょうか。
最後に、世界一の投資家とも呼ばれるウォーレン・バフェット氏の言葉を紹介しておきます。
「リスクとは自分が何をやっているかよくわからない時に起こるものです」
■まとめ
リスクヘッジは熟慮の上で
信用取引や先物取引を併せることにより、株価変動リスクをヘッジする手法がいくつかあります。しかし、それによる余分な経費負担や、信用・先物取引自体のリスクの高さといった、ヘッジしきれないリスクがあることにも注意をしておきましょう。
そもそも、ヘッジが必要なリスクを抱える取引はしないという考え方もありますので、リスクヘッジについては熟慮が必要ではないでしょうか。
株式会社ソーシャルインベストメント
取締役CTO
川合 一啓