株の信用取引において、同じ銘柄の信用買いと信用売りの両方を行うことを、「両建て」といいます。今回は株式会社ソーシャルインベストメントでトレーダーとして活躍する川合一啓氏が、「両建て」が株式投資において必勝法となり得るのか、考えていきます。
リスク回避しながらリターンを狙う「両建て」は株式投資の必勝法か? ※画像はイメージです/PIXTA

そもそも「両建て」とは?

株の信用取引には、お金を借りて株を買う「信用買い」と、株を借りてそれを売る「信用売り」があります。後者は「空売り」とも呼ばれます。そしてともに、決済期限までにお金または株を返さなくてはいけません。

 

信用買いは、株価が上がれば手持ち資金以上の利益を得られるのが特徴です。

 

空売りは、最初に株を売った際の現金があるため、株価が下がった時に株を買い戻して返済すれば利益を得られます。つまり、株価下落によって利益を得られるのが特徴です。

 

例として、ある銘柄の株価が上下していてどう動くかわからないときに、両建てのポジションを取るとします(なお、厳密に同日・同価格で信用買いと信用売りをしなくても、両建てと呼びます)。

 

株価が上がれば、買い建てていた分(信用買いした分)を決済して利益が出せます。もしその時点で売り建てていた分(空売りした分)を決済すれば、値上がりしているためその分は損失となりますが、買い建て分の利益によりその損失はヘッジできます。

 

そして、しばらく売り建て分は決済せずに、最初より株価が下がった時に決済をすれば、「買い建て分の決済による利益+売り建て分の決済による利益」を得ることができます。

 

このように、リスクをヘッジをしつつリターンを狙えるのが、両建て手法の特徴なのです。

株式投資の「両建て」…問題点は?

このように、一見「必勝法」とも思える両建て手法ですが、実は問題点もあります。

 

まず、諸経費です。上の例では話をわかりやすくするため考慮しませんでしたが、金利、貸し株料など、信用取引には現物取引より多くの諸経費がかかります。また、開始時に担保も必要なうえ、損失が一定以上になると追加の担保が必要になる場合もあります。

 

これらの費用を負担しながら利益を上げないといけないので、利益を出せたと思いつつそうでない場合や、追加の担保を求められる場合、追加の担保代わりに買い建て・売り建て分をその時点で(不本意な価格であろうと)強制決済される場合が、信用取引にはあるのです。

 

そして、上がったら買い建て分を決済する、または下がったら売り建て分を決済することにより、最初の決済では必ず利益を出せる両建てですが、では次に株価が反転してもう一方の決済により利益を出せるのが「いつ」になるかは、やはり不確実なのです。

 

上がって買い建て分を決済したがその後下がらない、下がって売り建て分を決済したがその後上がらない、ということが起こり得ます。そして最初に得た利益を大きく上回る含み損を抱えてしまうこともあります。さらに、信用取引は決済の期限がありますし、決済までに時間がかかるほど諸費用もかさみます。

 

このように、リスクヘッジをしつつリターンを狙えると思える両建て手法ですが、やはり落とし穴はあるのです。