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6.デジタルエンターテイメントが主役になる
コンテンツは王様であると言われます。しかし、プラットフォームは王国です。
コンテンツのストリーミングも、新型コロナウイルス感染拡大の影響でシフトが加速した消費トレンドです。しかし、これはほんの序章に過ぎないと考えています。現在ストリーミング・プラットフォームで利用されているコンテンツは全体の約3分の1ですが、2030年までには80%を超えることが予想されます。
世界的な感染症拡大収束後も、人々がストリーミングを利用するトレンドは継続するとみられます。また、ストリーミング・プラットフォームでは強大なネットワーク効果が期待できます。事業が拡大することで、コンテンツへの投資を増やし、利用料金を引き下げ、利用者を拡大することができます。
また、規模の経済や参入障壁の高さから、将来はひとり勝ちに近い市場構造となることが予想されます。そのような企業に投資妙味があると考えられます。
ゲーム産業も引き続き爆発的な成長を遂げる見通しです。また、エンターテインメントの場ではVR(仮想現実)とAR(拡張現実)がより主流になると考えられます。テクノロジーの進化によってVRやARを通じた、よりリアルな疑似体験が可能となり、コンサート、スポーツイベント、ショーなど実際の場にいるかのような体験が安価に実現できる日が来るかもしれません。
執筆者:Brad Barrett(リサーチ・ディレクター兼株式アナリスト)
7.自動運転車の普及が加速
2030年までに、世界中の都市部を中心に事業用車両の自動化が広く普及する見通しです。人々が自動車を手放すことは考えにくい一方で、自動車を保有する位置づけが、趣味の一環として自転車や馬に乗るように、必需品から贅沢品へと変化し、自家用車は都市部においては主たる移動手段ではなくなると考えられます。
自動運転車に関する市場の理解度はそれほど高くありません。現時点ではアルファベットのウェイモ(グーグル系列の自動運転技術開発企業)、アマゾンのズークス(アマゾンが買収した自動運転企業)、ゼネラルモーターズのクルーズ(自動運転車開発部門)などのように、業界のリーダーは会社組織の一部であり、投資家は純粋な自動運転車の企業に投資をすることができません。
しかし、自動運転車の一般への普及が進むにつれ、市場はこのような企業を再評価し始め、科学実験ではなく現実のビジネスであると認識するはずです。自動車の付加価値が従来の製造分野から新たなテクノロジーを要する分野へとシフトすることで、さまざまな産業から勝者が出現するとみられます。
また、2030年には一部の民間航空機にハイブリッド電気エンジンと水素エンジンが導入されていて、その後5年から10年にかけて広く浸透する可能性が高いと考えられます。自動運転の電気自動車や、電気と水素などの燃料を組み合わせた航空機が普及すれば、世界規模での温室効果ガス排出削減に大きな進歩をもたらす可能性があります。
執筆者:Chris Buchbinder(株式ポートフォリオ・マネジャー)
8.電気自動車が道路を制する
今後10年間の世界のEV(電気自動車)保有台数は年率28%で増加する見通しですが、この数値は保守的すぎる可能性があります。バッテリーコストが急速に低下し、技術の進化により、EVのコストは、新車だけでなく中古車を含めたあらゆるガソリン車並みの水準まで低下する可能性があります。米国の自動車保有台数がおよそ2.7億~2.8億台であることを踏まえると、長期的にはEV市場規模が想定をはるかに上回る可能性を示唆しています。
ボルボは2030年までに完全な電気自動車メーカーとなる旨表明し、ゼネラルモーターズも2035年までに全ての新車を電動化する方針を打ち出しました。大手企業の相次ぐ宣言を受け、今後自動車産業は大きな転換点を迎えると予想されます。
コスト比較だけでなく、顧客体験全般を変革するもう一つの重要なイノベーションが、ソフトウェア定義*1EV(software-defined EVs)の導入です。今ある製品がソフトウェアのアップデートを通じて、5年後にどれだけ改善されるのかにも注目しています。こうしたアプローチにより、EVメーカーは経年に伴う大幅な車両価値下落を一部回復できる可能性があります。
*1. ソフトウェア定義:従来型の自動車がハードウェアを中心に開発され、機能の一部を補完するためにソフトウェアを用いているのに対し、統合されたソフトウェアによってハードウェアを制御する仕組み。
投資家として、自動車の販売だけでなく、バッテリー管理、車内エンターテインメント、安全性の向上、自動運転技術などを提供するサブスクリプション・パッケージも展開する可能性を秘めた企業の発掘に力を入れています。
執筆者:Kaitlyn Murphy(株式アナリスト)
9.再生可能エネルギーの普及が世界中で拡大
今後10年間、再生可能エネルギーへの移行は飛躍的に進むと予想されます。エネルギーを化石燃料から電気にシフトするいわゆる電化の推進とグリーン・エネルギーへの移行は始まったばかりです。
2030年以降も、成長を後押しする強い追い風が吹く見通しです。再生可能エネルギーの時代が到来することは目前まで迫っており、自動化や人工知能により生産性や効率の改善され、発電コストの低下が実現されています。
従来、再生可能エネルギーは高額、非実用的、かつ薄利なビジネスとみなされていましたが、近年ではこのような見方が急速に変わっています。電力会社のなかには、既に事業の30%超を再生可能エネルギーが占め、旧態依然とした発電・送電網の管理会社ではなく、成長企業として認識され始めている企業もあります。
再生可能エネルギーへの移行で先行している企業として、欧州の電力会社であるエネル(イタリア)、エーオン(ドイツ)、オーステッド(デンマーク)などが挙げられます。欧州各国政府は温室効果ガスの削減に向けて高い目標を掲げ、再生可能エネルギー指令(Renewable Energy Directive)では2030年までにEU(欧州連合)域内でのエネルギー消費に占める再生可能エネルギーの目標値を32%としています。
執筆者:Noriko Chen(株式ポートフォリオ・マネジャー)
10.革新的な企業が世界をより良くする
今私達が目にしている革新的な変化は、世界をより良い方向へ導く可能性を秘めています。グロース投資家として、そのような製品やサービスを提供する企業を探しています。企業が成長サイクルのどのステージにあるのかを考慮しながら、幼年期、成長期、成熟期の3つのステージで成長機会を探しています。
重要なことは、私たちは信じられないほど変化に富んだ時代に生きているということです。変化は、弊社グループのようなアクティブ運用の投資家に投資機会をもたらします。
例えば小売業の場合、多額の投資予算の確保とIT部門の存在が不可欠でした。しかしシステム開発の急速な進展により、顧客開拓や在庫管理のハードルが下がることで、今後は中小企業も大きな力を得る可能性があります。オンラインショップは15分もあれば設立できるようになるかもしれません。
ヘルスケアもより開かれた領域となるとみられます。遠隔医療機器とロボット工学によって、日本の専門医がネブラスカ在住の患者を診察・手術できるようになるかもしれません。居住地に左右されることなく、誰もが一流の専門医にアクセスできるようになるのです。必要な要素は揃っています。患者の治療効果の改善や医療費の削減につながるだけでなく、より多くの命を救える可能性があります。
執筆者:Anne-Marie Peterson(株式ポートフォリオ・マネジャー)
元のレポート:『2030年の世界-長期投資家のための10の予測』
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