会社として「お金を出すべきところ」はしっかり出す
●必要なことにケチケチしない
リーダーとお金の話は、どうしても切り離せません。
いつでもなんでもご馳走するということではなく、ケチに見えないように振る舞ったほうがいいということです。
筆者の会社では、インフルエンザの予防接種はすべて会社で負担することにしました。ひとり4000円ほどで、7~8人のメンバーなら2~3万円の持ち出しです。
金額だけを見ると高い・安いという議論はあると思いますが、もし予防接種をせずにメンバーが休んだとしたら、むしろ損をすることになります。
生き金という言葉があるように、メンバーの健康面や仕事面に効果があるものに関しては、会社としてお金を出したほうがいいでしょう。
メンバーの健康面や会社のインフラに関する部分を整えるのも会社の責任です。以前、筆者の会社でも、ヒーターを足元に置いてほしいという要望が出たため、取り入れることにしました。
その人の健康状態や仕事に影響することであれば会社がすべて負担するというスタンスを見せることは、メンバーが会社を信頼することにもつながります。
●お金を使えないという思い込みをはずしてみる
筆者が清掃会社の代表として入社した当時、清掃員を募集しても人が集まりませんでした。
そこで筆者はお金を出してアルバイト募集の媒体に掲載することを提案しましたが、
「都丸さんは聞いていないかもしれませんが、うちの会社は求人媒体にお金を出してはいけないのです。ケチな会社なんですよ」
と言われました。そのとき筆者はこう伝え返しました。
「ほかに手段はありませんよね? 人を採用することが会社への貢献になるのであれば、お金を出してでも求人媒体に掲載するべきです」
皆、理屈ではわかっていても、会社はお金を出してくれないものだと思って委縮し、悪循環に陥ってしまっていたのです。
●必要と思われる経費を会社に申し入れするのもリーダーの仕事
会社の規模や人数によっては、とてもそこまで負担できないということもあるでしょう。
そういった場合には、会社に対して申し入れすることもあっていいと思っています。
たとえば、年に1回だけメンバーたちに食事の機会を与えたい、そこにはこのような効果があるから、半分でもいい、とお願いをするのです。
このような交渉をすることは、リーダーの仕事のうち。
最初から諦めるのではなく、必要性をまとめたうえで、一部でも出してもらえるようにアプローチすることも、中間リーダーの仕事ではないかと思うのです。
本当に必要な提案をしてもらえたと感じられれば、経営層も新しい視点だと喜ぶのではないでしょうか。
それぞれの人の小さな提案の積み重ねが、その会社にいまあるルールを形づくっているはずです。
中間リーダーでなく、自身が会社のトップであるならば、メンバーのために積極的に生き金を使う選択をしたいものです。
社員の責任が重すぎると、だれもチャレンジしなくなる
●「売上至上主義」がお客さま目線を失わせる
組織経営論の最近の主流は「ティール組織」ですが、少し前までは、KPIマネジメントが人気でした。KPI(Key Performance Indicator)は、日本語で「重要業績評価指標」と訳され、企業が掲げた目標に向かって、適切に進んでいるかどうかを数値で測るものです。
細かい説明はここでは割愛しますが、KPIマネジメントは、ひと言で言えば、売上予算などの会社が掲げた数値目標の責任の一部を社員にも負わせるような設計になっています。
KPIマネジメントを取り入れている企業はいまでも少なくありませんが、長期的に考えたとき、筆者はあまりよいやり方とは思えないのです。
こうした指標を設けることで、一時的に業績を上げることは可能かもしれません。しかし、KPIは「売上至上主義」「ノルマ達成への囚われ」という負の価値観も生み出します。そして、「KPIを達成すれば、評価される」という図式ができあがると、お客さまの都合はどこかに行ってしまうのです。
「今月の目標には達成がかかっているので、なんとかなりませんか」とお客さまに相談する営業の方がいますが、それはその人の都合です。表情を窺うと、かならずと言っていいほど、どこか暗いのです。売っている本人がつらい状況で、お客さまが満足するだけのいい仕事ができるのでしょうか。
●メンバーが楽しく働いているだけで売上も上がる
仕事の究極の目的は、人の役に立つこと、自己実現をすることです。
数字は本来二の次。リーダーは常にこの視座を持たなければなりません。ですから、筆者が日々やっているのは「一人ひとりを信じること」です。
メンバーが楽しく働いていれば、お客さまも満足し、売上も上がる。そこを目指すのがリーダーの仕事だと思います。
社員に責任を負わせすぎるから、多くの社員は責任を逃れるためにチャレンジもしなくなってしまうのです。なぜなら、自分の評価や給料にその責任が反映されてしまうからです。
究極のリーダーは、皆に助けられる人です。そうなるには、「自ら率先して動くこと」「人の責任を問わないこと」。
予算達成を評価と紐づけて社員に課すことはしなくていいのです。
このようなやり方を「ゆるすぎる」と言う人もいますが、「この人と一緒に仕事をしたい、この人を助けたい」と思える関係性を築けば、信頼が急に崩れることはありません。メンバーを信じ、それを行動で表せば、メンバーはかならず応えてくれます。
どちらか一方にストレスがかかるようなやり方は、本来必要ないのです。
都丸 哲弘
wedo合同会社 代表
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