本記事では、行政書士事務所ユーサポートの上野佳子氏が「62歳の独身男性」の相続トラブルを紹介し、遺産分割協議について解説していきます。

行政書士が解説…相続で大切な「遺産分割協議」

民法では遺産の分配割合を法定相続分として定めていて、相続人に対する規定は次のようになります。

 

■法定相続分の相続人に対する規定

 

配偶者は常に相続人です。

 

配偶者のみの場合……配偶者が全てを相続。

 

第一順位:配偶者と子供がいる場合……配偶者は全体の2分の1、子供全員で全体の2分の1を均等分配

※配偶者がいない場合は子供全員で全体を均等分配。

 

第二順位:配偶者と父母(または祖父母)がいる場合……配偶者は全体の3分の2、父母で全体の3分の1を均等分配。

※配偶者がいない場合は父母(または祖父母)が全体を均等分配

 

第三順位:子供がおらずかつ父母(または祖父母)もいない場合……配偶者は全体の4分の3、兄弟姉妹全員で全体の4分の1を均等分配。

※配偶者がいない場合は兄弟姉妹全員で全部を均等分配

 

今回の事例では問題ありませんでしたが、相続人が増えると、不動産は……預貯金は……と個別具体的に決めていく必要があります。そのために行われるのが遺産分割協議で、相続人全員で分割方法について協議します。

 

これは、全員が同じ場所に集まって協議する必要はなく、方法は状況に応じて変更することが可能です。ただし、全員が「参加する」ということが大切になります。

 

また、未成年の相続人がいる場合は家庭裁判所に特別代理人の申立てを行う必要があり、認知症の相続人がいる場合には成年後見人を選任しなければならないこともあります。

 

「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。」と民法に定められているように、相続人同士でそれぞれの状況を踏まえながら協議を進めることが大切なのです。

 

協議の内容がまとまったら、遺産分割協議書を作成します。この遺産分割協議書には相続人全員の署名捺印が必要です。捺印は全員が実印で行い、印鑑証明書を添付すれば遺産分割協議書の信用性を高めることができます。

 

不動産の相続登記や金融機関の相続手続きには、実印で捺印し、印鑑証明書を添付した協議書でなければ手続きができません。協議がまとまらず、どうしても意見があわない場合は遺産分割調停という審判を申し立てることになります。

 

遺産分割調停では、調停委員が、各相続人の事情や分割方法の希望を聴取し、解決案の提示や必要な助言を行ってくれます。協議が難航して、相続人同士では解決出来そうにない場合は、弁護士さんに相談して、この手続きをとる方法もあります。

 

協議が長引く間に、相続人の誰かが亡くなってしまうということも多々あります。このような場合の相続を数次(すうじ)相続または二次相続といいます。手続きが複雑化したり、相続税が余分にかかったりする場合がありますので、早めの対応が必要になります。

 

※本記事で紹介されている事例はすべて、個人が特定されないよう変更を加えており、名前は仮名となっています。

 

 

上野 佳子

行政書士事務所ユーサポート代表

 

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