労務管理は院長にとって最も重要な仕事
人事労務管理は、職場をあずかる院長の最も重要な仕事です。その仕事を全うするためには、院長が“人事労務管理力”(人事労務管理に関する知識と実践をもって、職員との信頼関係を築き、個人と組織の成長に貢献する力)を身につけ、発揮することが必要です。
院長にとって人事労務管理が、なぜ最も重要な仕事なのか、それは、次の理由によります。
(1)クリニック業績の向上に貢献できる
(2)職員との信頼関係の構築ができる
(3)職員の「やる気」を引き出し、能力を向上させることができる
(4)人事労務トラブルを未然に防ぐことができる
(1)クリニック業績の向上に貢献できる
院長は適切な人事労務管理を実施することによって、人件費を有効に活用し、生産性を高め、付加価値を創造していくことができます。人件費の有効活用とは、職員の「やる気」を高めながら、必要な場面で、必要な人を、必要なだけ(時間)投入し、最大限の患者サービスを提供するということです。例えば、「ムダな残業を削減し、そこで生み出された利益は賞与などで職員に還元していく」「教育研修の時間に投入する」ということなどです。
また、職員にとっては定時(またはより少ない時間)で仕事が終了し、趣味や余暇、育児などに時間を使うことができれば、こんなに良いことはありません。すなわち、院長は、人事労務管理の実践によって、より少ない時間でクリニックの利益に貢献し、成果を職員と一緒に分かち合うことに、大きく貢献できるということです。
(2)職員との信頼関係の構築ができる
院長が職場において、人事労務に関する最低限必要な知識をもっていれば、それだけで職員からの信頼が得られます。例えば、日常の労務管理で必要となる労働基準法の知識や就業規則の内容をしっかり理解していれば、職員の就業上の悩みや求めに応じ、すぐにその場で返事をすることができます。職員は、そのような院長に対しては、必ず信頼を寄せてくれるはずです。
また、職員の成長を願って、職員と向き合って対話をしたり、人事労務トラブルを未然に予防する配慮や行動をすることによって、院長と職員、同僚職員同士の強固な信頼関係を築くことができます。このような院長のいる職場は、明るく元気になり、活力が生まれます。さらに、職員がチームワークをもって仕事に取り組むようになりますので、仕事の成果も必ず上がります。
職員と強固な信頼関係が優秀な人材確保に繋がる
(3)職員の「やる気」を引き出し、能力を向上させることができる
院長が、職員のキャリアに関する悩みや課題にしっかり対話をもって応え、中長期的な観点からキャリア形成のアドバイスができれば、職員の自発的かつ本物の「やる気」につながります。また、日常的には、職員の仕事のプロセスや職員の良さ(持ち味)を、そのつど具体的に認めたり、褒めたりできれば、職員は院長と信頼関係を深め、仕事の成果をあげていくものと思われます。
特に、職員の人事評価における前向きなフィードバックの実施や、新しい仕事にチャレンジさせれば、職員の能力を向上させることができます。このような院長のもとでは、優秀な職員が育ち、クリニックにとっての財産(人財)となります。
(4)人事労務トラブルを未然に防ぐことができる
人事労務に関するさまざまなトラブルは、職場で起きています。したがって、トラブルの“火種”を早期に発見し未然に防げるのは第一線で職場をあずかる院長です。
万が一、人事労務トラブル(第1回目参照)が発生してしまうと、院長自身も大きな痛手です。しかし、このようなことは、院長が観察力をもって日頃から職員をみていれば、その多くを未然に防ぐことができます。決して前向きな仕事ではありませんが、まさに院長だからできる重要な仕事です。