人工知能が進化しても、人間にしかできないものとは?
それでは、直近の改訂には、どのような背景があったのかを読み解いてみましょう。
2016(平成28)年12月21日中央教育審議会「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」には、この改訂の時代背景が次のように記されています。
「21世紀の社会は知識基盤社会であり、こうした社会認識は今後も継承されていくものであるが、近年、情報化やグローバル化といった社会的変化が、人間の予測を超えて加速度的に進展するようになってきている。とりわけ第4次産業革命ともいわれる、進化した人工知能がさまざまな判断を行ったり、身近な物の働きがインターネット経由で最適化されたりする時代の到来が、社会や生活を大きく変えていくとの予測がなされている。」
これはまさに、私たちが今、肌で感じている社会の変化ではないでしょうか。
2013(平成25)年10月、オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授とカール・ベネディクト・フレイ博士は、今後10年~20年の間に、米国の総雇用者総数のうち約47%の人の仕事が、コンピュータにとって代わられる可能性が高いと予測しました。
さらに、両名は2015(平成27)年12月に野村総合研究所との共同研究の結果を発表しました。それは、日本国内の601種類の職業について、人工知能やロボット等で代替される確率はどれくらいかという試算です。それによると、日本の労働人口の約49%の人が就いている職業が、10~20年後には人工知能やロボット等で代替することが可能になるという結果となっています。
これらの情報が広く報じられたことで、子どもを育てている親世代には大きな衝撃が走りました。これまでの経験則では予測できない未来像に、「この子の将来はどうなるのだろう」「今、この子にどのような教育を受けさせれば、将来路頭に迷うことのない人生を送れるだろうか」と不安を掻き立てられた人も少なくないでしょう。
それに呼応するかのように、「AIに仕事を奪われない子を育てるにはどうしたらよいのか」「世界基準で一流とされる子どもに育てるにはどうしたらよいか」といったテーマの書籍も多く出版されました。
ただ、2016(平成28)年12月21日の中央教育審議会の答申をよく読んでみると、次のように述べられています。
「人工知能がいかに進化しようとも、それが行っているのは与えられた目的の中での処理である。一方で人間は、感性を豊かに働かせながら、どのような未来を創っていくのか、どのように社会や人生をよりよいものにしていくのかという目的を自ら考え出すことができる。
多様な文脈が複雑に入り交じった環境の中でも、場面や状況を理解して自ら目的を設定し、その目的に応じて必要な情報を見いだし、情報を基に深く理解して自分の考えをまとめたり、相手にふさわしい表現を工夫したり、答えのない課題に対して、多様な他者と協働しながら目的に応じた納得解を見いだしたりすることができるという強みを持っている」
この答申には、これからを生きる子どもたちをいかに育てていけばよいかというヒントが詰まっているといえます。
人間ならではの発想を生み出す源となる「感性」をいかに磨いていくのか。場面や状況を理解して自ら目的を設定し、その目的に応じて必要な情報を見いだし、情報を基に深く理解して自分の考えをまとめるのに必要な「論理的思考力」をいかに身につけるのか。
相手に応じてふさわしい表現を工夫できる「表現力」や、答えのない課題に対して、多様な他者と協働しながら目的に応じた納得解を見いだすための「問題解決力」をいかに鍛えていくのか。
これらに対応するための学習指導要領の改訂内容が公になってから、巷では「外国語教育」や「プログラミング教育」ばかりが脚光を浴びてきました。確かに、両方ともこれからの時代に求められるスキルではあるでしょう。特にプログラミング教育については、親世代にはなじみがないこともあり、注目を集めるのも当然かもしれません。
小林 洋子
小林音楽教室 主宰
沼田 峰紀
株式会社レゼル 代表取締役
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