3日間で合計50万円分の売上をつくった「考え方」
目的と手段を混同してしまう人がいますが、常に見失ってはいけないのは目的のほうです。
大学1年生の夏休み、地元のデパートでアルバイトをしました。仕事内容は、ピーナッツやスルメなどが入ったお盆用の珍味を3袋1000円で販売すること。1袋398円、3袋買うと1000円です。
最初は真面目に売っていましたが、なかなか売れません。「試食があればいいのに」と言われることもありました。販売していると、1袋で買っていく人も多くいました。
お店の責任者はおらず、わたしひとりだけ。1袋で買っていく人の数を数え、6袋売れればだいたい1袋が無料になるという計算をしました。
そこで、12袋売れたら2袋はサンプルで出していいと勝手に判断し、「おいしそうね」と言ってくださった方には、その場で袋を開けて、「どうぞ、食べてみてください」と試食販売を開始。
すると、お盆の3日間で50万円ほどの売上になりました。
当時は、試食販売が普及していない時代でしたが、とても評価していただくことができました。
その頃はわたしも若かったので、女性のお客様が「こんなに男前のおにいちゃんなんだから買ってあげなよ」と、お客様がお客様をどんどん紹介してくださって、おもしろいように売れていきました。こんなうれしい誤算もあり、冬のアルバイトにも呼んでいただけることになったのです。
「売る」という目的を果たすためには販売の「手段」を柔軟に変えていいということを実感した出来事でした。
どんな仕事にも目的があります。ところが、手段にとらわれすぎて、目的からどんどんずれてしまうことも珍しくないのです。
どんなときも「目的は何か」を考え、行動する。これだけで、大きく結果が変わります。
「高額すぎて売れない商品」を買ってもらうには?
九州にあるテーマパークで働いていたことがあります。会社のあらゆる課題を解決する立場として入社しました。言い換えれば、社長も含め、その会社の社員ができないことをする、というのがわたしのミッションでした。
その現場が抱えていた課題のひとつに、自社で開発した1箱7000円のクッキーが売れないというものがありました。
クッキーに配合されたきのこの成分が脳の活性化を促すので、記憶力アップにつながるというもので、簡単に言うと「頭のよくなるクッキー」というなんとも奇想天外なコンセプトです。テーマパークという場所柄もあって、7000円という高額商品はまったく売れません。
わたしに課されたのは、このクッキーを売店で売るという難解なミッションです。当時、売店のひとりあたりの客単価は、平均1000円程度…。「さあ、どうしたものか…」頭をひねらせた結果、わたしはあることを思いつきました。
「どうしたら買いたくなるか?」を考えれば絶対売れる
まずわたしがしたことは、クッキーを箱から出して、売店に訪れた子どもたちに「試食」と称して食べてもらうこと。「さあ、どんどん食べていいよ」と勧めると、「おいしい!」とみんな喜んで食べるのです。
そうすると、一緒に来ている親御さんやおじいちゃんやおばあちゃんが見に来ます。そこで、はじめて商品説明をします。
「脳の活性化にいいクッキーで、続けて食べたほうがいいんですよ。ただ、1箱すべて買うと高いので、興味があるならバラ売りもします。1個150円で売っていますので、続けて食べられるかどうか、お子さんの様子を見てからのほうがいいと思います。よく考えてから買ってください。高いですからね」
デメリットであった「高い」という言葉を、何度も何度も伝えたのです。
すると、おじいちゃんが子どもに「これ食べられるの?」と聞きます。こちらはおいしいと言ってもらえるように、たくさん試食してもらっているので、子どもは「うん、おいしい!」と答えてくれるわけです。
そうすると、じゃあ「3箱ちょうだい」と買ってくださる。これを繰り返したところ、コンスタントに毎日何箱かかならず売れていきました。
20代くらいの若いお客様には、「シャレで頭のよくなるクッキーはどうですか?」とおすすめしました。
すると、「おもしろいからお土産にしよう」と買ってくださることも。若い世代の人は、ちょっと高くてもおもしろければ食いついてくれるのです。
この1箱7000円のクッキーを販売してからは、会社からも信頼していただき、販売の教育も任せてもらえるようになりました。最終的には、1日1万円だった売店の売上を10万円にすることができました。
わたしが実践したのは、「どうしたら買いたくなるか?」。お客様の立場と心理を徹底的に考えること。それだけです。それをクリアすれば、確実にものは売れるのです。
大林 誠一
シーアンドシー株式会社 代表取締役
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