2020年に突如として世界を襲った新型コロナウイルスの猛威はいまだ収束を見込めず、業界によっては厳しい状況に追い込まれています。世界の投資家が注目するフィリピン株式市場についてレポートする本連載。今回はコロナ禍で大きな打撃を受けているフィリピン航空業界の現状と今後について、一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングのエグゼクティブディレクターである家村均氏が解説します。

フィリピン航空…破産申請に向けた報道も

 

日本同様、フィリピンではまだ感染者数を抑えきれていない状況ですが、一方で政府は幅広く国民に行き渡る量のワクチンの確保をしています。そこでコロナ後を見据えた銘柄として、ロナで大きな痛手を被っている航空業界とその周辺業界を見ていきます。

 

最初に「フィリピン航空(PAL)」から見ていきます。航空業界は今、非常に厳しい状況にありますが、なかでも「フィリピン航空」は最も大きな打撃を受けています。従業員の大幅な解雇を実施していますが、運航を維持するために、毎月20億から30億ペソ近くの損失を出している状況です。

 

同社は、フィリピンの財閥「Lucio Tan(LT)グループ」に属するエアラインです。「Lucio Tanグループ」は、タバコ、酒類の製造販売や準大手銀行の「PNB」を有しています。また、「ANA」と資本業務提携をしていて、「ANA」が10%程度の株式を保有しています。

 

新聞報道などによると、来月までに破産法第11章の適用を申請しようとしています。債務を整理するために、債権者と交渉している状況です。市場は、ファンドなどのホワイトナイトが登場するか注視しています。

 

日本では「JAL」が破綻した際には、国営ファンド産業再生機構が多額の資金を投入しましたが、フィリピン政府の優先事項は最も脆弱なセクター(中小企業や零細企業)を支援することで、航空会社は優先事項の一部として考慮されていないようです。

 

次は「CEBU AIR」、通称「CEBU PACIFIC」を見ていきます。直近1年で200億ペソ近くの純損失を出しています。事業継続のために、複数の銀行から資金調達をしていて、国際金融公社(IFC)からは2億5000万ドルを調達することができました。月間ベースで15億から20億ペソの調達になります。

 

同社は、フィリピン10大財閥の一角「GOKONGWEI家」がオーナーの「JG SUMMITグループ」に属しています。同財閥傘下には、通信の「PLDT」、不動産の「ROBINSONS LAND」、電力の「メラルコ」、食品の「ユニバーサルロビーナ」等多くのフィリピンを代表する企業が属しています。そういった意味での財務的なバックアップはあり、コロナ後の旅行解禁に向けて準備していると見られています。

 

また、同社は、いわゆる格安航空会社(LCC)であり、国内・国際線比率が約60:40ということで、前述の「フィリピン航空」よりも、コロナ後のリバウンド需要を取り込み安いビジネスモデルになっていると思います。

 

ちなみに「フィリピン航空」も「CEBU PACIFIC」も貨物事業の割合は、5~10%と低いので、基本的には、人の移動制限の解除による旅客需要の回復が事業回復には必須となります。

 

※写真はイメージです/PIXTA
※写真はイメージです/PIXTA

 

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※当記事は、情報提供を目的として、一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングが作成したものです。特定の株式の売買を推奨・勧誘するものではありません。
※当記事に基づいて取られた投資行動の結果については、一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティング、幻冬舎グループは責任を負いません。
※当記事の比較するターゲット株価は、過去あるいは業界のバリュエーション、ディスカウントキャッシュフローなどを組み合わせてABキャピタル証券のプロアナリストが算出した株価を参考にしています。

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