米国の歴史上最大の「民間不動産開発事業」
本連載の第6~8回までは、マンハッタンの購入手続きについて説明してきましたが、今回から数回に分けてマンハッタンのエリアについて紹介していきます。
第1弾目は、マンハッタンで今一番話題の開発エリア・ハドソンヤードについてです。
正式名はハドソンヤード再開発プロジェクト (Hudson Yards Redevelopment Project)と呼ばれています。
再開発エリアは、マンハッタンのヘルズ・キッチンおよびチェルシーのハドソン川沿いのエリアにわたり、西端はハドソン・リバー・パークおよびハドソン川、東端は7番街および8番街、南端は西28丁目および30丁目、北端は西43丁目にまで及びます。広さは28エーカー(約13.5ヘクタール)の広大な敷地に及び、総事業費は200億ドルで、米国歴史の中でも最大の民間不動産開発事業と言われています。
開発自体は2012年に起工されました。開発は2段階のフェーズに分かれ、全プロジェクトは2024年に完成予定とされています。ハドソンヤード再開発は、全米有数のグローバルデベロッパーであるRelated Companiesと、カナダ最大の機関投資家の1つである不動産投資会社、かつ、ディベロッパーのOxford Properties Groupが開発を主導しています。
ハドソンヤードには、居住空間を始めとしてショッピングモール等の商業施設、オフィス・スペース、ホテル、レストラン、美術館などが建築され、エリアに融合する新しいランドマークとなりそうです。
この開発で、居住用スペースの建築が予定されている建物には、15ハドソンヤードと35ハドソンヤードがあります。特に15 ハドソンヤードは、70階建ての高層ビルディングの建築が予定されており、完成は2018年頃とされています。こちらの建物は現在385世帯の分譲コンドミニアムと賃貸ビルディングの両方が計画されています。
居住用のこの2つのビルディングの他に、オフィスタワーとして30 ハドソンタワー、10ハドソンタワー、55ハドソンタワーの建設も予定されています。
日本の大手不動産会社、三井不動産株式会社も米国子会社を通じてハドソンヤードプロジェクトを構成するオフィスビル郡の1棟に開発を進めていること話題のひとつです。マンハッタンでの日系企業による開発事業の中では、延床面積において過去最大の事業規模となるそうです。
また、すぐ南にはチェルシー(Chelsea )エリアに続くハイライン(The High Line)もあり、ハドソンヤードがこのチェルシーとミッドタウンウエストエリアをつなぐ大きな架け橋となるでしょう。
新駅開通でマンハッタンはより活性化する!?
ハドソンヤードの話題に合わせて、2015年9月13日、地下鉄7番線の新駅である「34th Street-Hudson Yards」が開通しました。この駅は、ニューヨークで469個目の駅となり、13年越しのプロジェクトがついに完成した瞬間でもありました。
ますます開発が進むクイーンズエリアのチャイナタウンFlusing駅から、この新駅を結ぶこの7番線は、今後、人の流れを大きく変えるきっかけとなるでしょう。この路線はグランドセントラル 駅やタイムズスクエア 等の主要なスポットを網羅しています。
さらに、コートスクエア(Court Sq)やクイーンズボロプラザ(Queensboro Plaza)駅といった、コンドミニアムの建築クレーンが乱立するエリアを通り、マンハッタンに路線が延びています。地下鉄がこれまで走っていなかったため、普段訪れることが少なかったこのエリアも、ハドソンヤードの開発と共に、いよいよ本格的な始動となりそうです。
ハドソン・ヤードは、日系企業が点在するグランドセントラル駅周辺へ地下鉄1本でアクセスが可能な立地条件であること、また、この開発独自の自然とオープンスペースの調和が楽しめる住空間は、ちょうど東京近郊の二子玉川や豊洲といった新規開発された空間に似ています。
この大規模な開発プロジェクトによって、マンハッタンのスカイラインも大きく変わることになることは間違いないでしょう。