(写真はイメージです/PIXTA)

コロナウイルスの影響で未曾有の危機に瀕する航空業界。事態の収束のためにどのような動きが求められるのでしょうか。日・米・英・中に拠点を持ち、世界中の企業のビジネスをサポートする、ピルズベリー・ウィンスロップ・ショー・ピットマン法律事務所が、航空業界の現況と今後の動向を探ります。※本記事は、『Pillsbury Legal Wire(2020/4/Vol. 74)』を転載・再編集したものです。

 

●本記事では、航空機の運航者(エアライン)、所有者(レッサー)または抵当権者(レンダー)が、既存の航空機ファイナンスおよびリース契約において直面し、対処しなければならない主要な課題を取り上げます。

国境閉鎖、都市封鎖、フライト大量キャンセル…

航空業界は目下、史上最大規模で、最も深刻な新型コロナウィルス(COVID-19)大流行と対峙しています。国境が閉鎖され、都市は封鎖され、大型クルーズ船が向かう先で入港できず、フライトが大量にキャンセルされ、航空機が駐機しています。新型コロナウイルスによる航空機業界の影響だけでなく、世界貿易への影響は甚大で今までに見たことがないような規模となっています。

 

人類とウィルスの歴史を鑑みれば、新型コロナウィルスによる犠牲は避けられないとしても、航空業界は協力し合い、事態の収束後はより緊密で強力な商業的関係を築いているでしょう。

 

しかしながら、いかなる利害関係人もリスクを無視した対策を取るわけにはいきません。本記事では、航空機の運航者(エアライン)、所有者(レッサー)または抵当権者(レンダー)が、既存の航空機ファイナンスおよびリース契約において直面し、対処しなければならない主要な課題を取り上げます。

 

われわれPillsburyの弁護士は、直近の36ヵ月だけでも、JOLCOのアレンジャー、所有者(レッサー)または抵当権者(レンダー)、グローバルな航空機の運航者(エアライン)と協力して、世界中で数多くのJOLCO案件を取り扱ってきました。これらのストラクチャーは、航空機の運航者(エアライン)が魅力的で信頼性の高い資金源を活用する新たな機会を提供し、抵当権者(レンダー)は優良な航空機の運航者(エアライン)のクレジットを利用し、中小企業をはじめとした日本の投資家は、利益を相殺するためにバランスシートの減価償却費による損失を計上させていました。

 

しかし、世界を取り巻く今の状況は、JOLCOという形で信頼できる資金源であっても、利害関係人に大きな痛みを伴うことと無縁ではないことを示しています。世界の空の旅は封鎖されています。ほとんどの飛行機が地上にあり、航空機の運航者(エアライン)の株価も急落しています。所有者(レッサー)のレターボックスに「ラブレター」が殺到しています。今後すべての航空機の運航者(エアライン)が生き残るわけではありません。多くの中小企業をはじめとした日本の投資家は様子見をしていますが、現在および将来のJOLCO案件は危機に瀕しています。

 

「団結すれば立ち、分裂すれば倒れる」(united we stand, divided we fall)。契約者と利害関係者は緊密な関係を守る必要があり、十分な情報共有が不可欠となっています。私たちはこの点を理解し、利害関係人のすべてが必要な準備しておくべきです。

「レントホリデー」の要望と「ラブレター」の送信

債務不履行は、将来の支払不能の可能性を予告する早期の兆候です。しかし、現在目にしているのは、航空機の運航者(エアライン)から所有者(レッサー)への要望です。いわゆるレントホリデーに関するものです。航空機の運航者(エアライン)によりますが、レントホリデーの期間を1ヵ月から6ヵ月にすることや、場合によっては当該保証金(メンテナンスリザーブ)の繰り延べること等を含む「ラブレター」が送られています。

 

「ラブレター」を受け取った所有者(レッサー)は、統合されたフロント/アプローチと情報共有が不可欠です。レントホリデーを申請する航空機の運航者(エアライン)は、レントホリデーを正当化するためにできる限り多くの背景事情を所有者(レッサー)に提供することが奨励されます。多くの航空機の運航者(エアライン)は、既に所有者(レッサー)および抵当権者(レンダー)とレントホリデーまたはリース料の減額について交渉を行っており、その結果、一部の所有者(レッサー)へノンリコース融資義務およびコベナンツに関し悪影響を及ぼす可能性があります。

 

現在の市場状況から鑑みて、航空機の運航者(エアライン)の支払不履行が直ちに契約不履行の発生や、債権者の保証が強制されたりするような事態を引き起こす可能性は低く、航空機の運航者(エアライン)はこのような可能性を想定するのではなく、全当事者にとって有効な商業的解決策を講じるためにカウンターパートと積極的に関与すべきです。

 

解決策を講じる過程で、今後、政府の支援等どのような第三者の支援を求めているかについての詳細や、現在の財務状況に関する情報提供が求められる可能性が非常に高いでしょう。債務不履行はこれまでも、そしてこれからも常に将来的な債務超過の可能性を予告する早期兆候ではありますが、債務不履行に対し、航空機のリポゼッションを急ぐのではなく、当事者の協力体制が必須となります。たとえ要求される前であっても情報共有を定期的に行われるようでなければ、それまでに築き上げた協働体制が弱まってしまうかもしれません。

 

(※画像はイメージです/PIXTA)
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