2020年のM&A市場では、業種別の件数ランキングで「下剋上」が起こった。長年、件数トップを走ってきた「製造業」を抜いて、人材派遣や介護などの「サービス業」がトップの座を奪った。海外M&Aが多い「製造業」が件数を減らし、国内勢中心の「サービス業」が件数を伸ばしたためだ。2021年に入ってからも、サービス業はM&A件数で製造業を上回っている。背景には、新型コロナウイルスの感染拡大と国内の資産価格の上昇があり、岡三グローバル・リサーチ・センターの高田創理事長は「2021年はサービス業など国内M&Aの幕開けの年になるだろう」と予測している。2020年のM&A市場と2021年の見通しについて、同社執行役員広報部長の日高広太郎氏が解説する。

サービス業は223件、「盟主」製造業を約50件上回る

M&A仲介のストライク(M&A Online編集部)が、上場企業に義務づけられた適時開示情報にもとに経営権が異動するM&A(グループ内再編は除く)について集計したところ、2020年は製造業を対象としたM&Aは174件と前の年を42件下回った。製造業のうち、化学(前年24件→14件)、機械(同24件→14件)、その他製品(同43件→23件)がそろって4割以上落ち込んだ。

 

一方、サービス業のM&Aは223件で、前年を24件上回った。このうち人材サービスが27件、教育・コンサルタントが25件とそれぞれ前年比1.7倍に増えた。個別案件では、人材派遣サービスのアウトソーシングは11月にアイルランド最大の人材派遣会社Cpl Resources を買収すると発表。

 

セガサミーホールディングスは11月に、アミューズメント施設企画・運営子会社のセガエンタテインメントの株式85.1%を、遊戯機器レンタル事業のGENDA(東京都千代田区)に譲渡することを決めた。足元の2021年もサービス業のM&Aは2月末までに39件と製造業の30件を上回っている。

下剋上の背景にある「コロナ禍」と「海外の落ち込み」

「下剋上」が起きた背景には、国内勢中心のサービス業とグローバル企業の多い製造業の違いがある。世界的にコロナ禍が深刻になるなか、国境を越えた行き来が難しくなった。このため、海外企業とのM&Aの交渉が遅れたり、頓挫したりするケースが増え、20年の日本企業による海外M&Aは147件と2019年比で25%減少した。

 

グローバル化が進む製造業は海外とのM&Aが全体の半分弱を占める。全業種(中分類11業種)の海外M&Aの約半分も製造業1業種だけで占めており、それだけクロスボーダーの交渉がしづらい状況がM&Aの重荷になったとみられる。

 

コロナ禍は国内勢のM&A市場の活況ももたらした。国内案件が8割以上のサービス業が大幅にM&A件数を伸ばしたのに加え、目立ったのが情報通信業だ。2020年は169件と前年(160件)を上回った。

 

情報通信のうちIT・ソフトウエア業界は152件と前年を9件上回り、過去最多を更新した。IT人材の不足に加えて、コロナ禍で在宅勤務が普及し、組織の生産性向上やビジネスモデルの変革を促すDX(デジタルトランスフォーメーション)の導入が進み、M&Aが活発となった。

 

DXの導入進み、M&Aが活発に(画像はイメージです/PIXTA)
DXの導入進み、M&Aが活発に(画像はイメージです/PIXTA)

 

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