五十代にして初めての海外赴任、勤務地はブルターニュ
二〇〇六年二月、五十代にして初めての海外赴任が始まった。勤務地はフランス北西部のブルターニュ地方。海に近い地域なので、緯度のわりには(樺太と同じ)比較的暖かいという。
住まいはその首都であるレンヌという町だ。パリからTGV(高速鉄道)に乗って約二時間、人口は二十万人ほどで、レンヌ大学を始め学校が多く、学生の街だ。仙台とは姉妹都市だという。市の中心部は古い街並みが残っていて、ヨーロッパに来たなあというのが私の第一印象である。
引っ越し荷物のうち船便の分が到着していないので、最初二週間ほどはホテル住まいでその後アパートに引っ越した。毎日三十分くらいかけて車で会社まで通い始めた。最初は左ハンドルの上、道や標識もよくわからず、ノロノロ運転で、緊張しっぱなしであったが、二ヵ月もすると慣れてくる。しかし独特な円形交差点の運転はとまどうことが多かった。
車の運転や買い物などわからないことだらけだったが…
車の運転から始まって、スーパーでの買い物、ガソリンの入れ方などわからないことだらけで、最初は珍事件の連続だった。
車を運転していて道に迷い、このまま帰れないのではないかと途方に暮れたとき、ホテルから引っ越した当日アパートの部屋の鍵の開け方がわからなかったとき、アパートの地下ガレージに閉じ込められたとき、アパートの集合玄関の鍵を部屋に置いたまま外出して入れなくなったときなど……。
そんなときはどうしようかとパニックに陥った。
スーパーでの買い物も書いてある文字が読めない上に、買い方がよくわからず最初は汗のかきどおしだった。でも地図を広げながら道を歩いていると、わからないのかと向こうから聞いてきて教えてくれるし、車で迷って、歩いている人に聞くと、それなら自分の車で先導するから後に付いて来るように、と言ってくれる人もいる(日本ではまずいない)。
スーパーでも他の買い物客にこの洗剤は風呂用かトイレ用かなどと聞くと親切に教えてくれる。着任当時、それこそ何十人という人にいろいろな場面でいろいろなことを聞くはめになったのだが、一度も迷惑がられたことがなかった。フランス人は何と親切な人種なのか!
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