「相続時精算課税制度」とは、「生前贈与をするときは2500万円まで贈与税を非課税にしますが、贈与した人が亡くなった時には、その人の遺産だけでなく、過去に生前贈与した財産も一緒に、相続税を課税しますよ」という制度です。今回は、この相続時精算課税制度のメリット・デメリットを、相続を専門とする円満相続税理士法人の桑田悠子税理士がわかりやすく解説していきます。

デメリット1:通常の110万円非課税枠が一生使えない

相続時精算課税制度は、ケースによっては、非常に有効的ですが、デメリットを検討せずに適用をスタートしてしまうと、非常に恐ろしい事態に陥ります。

 

相続時精算課税制度は、一度選択すると、一生、相続時精算課税制度を使い続けなければいけないのです。そのため、適用をスタートする前に、必ずデメリット・メリットを確認しましょう。

 

適用する前にメリットをデメリットを把握する(※写真はイメージです/PIXTA)
適用する前にデメリットとメリットを確認する(PIXTA)

 

まず相続時精算課税制度のデメリット1つ目は、「通常の110万円非課税枠が一生使えなくなる」ことです。

 

贈与の方法は2種類あります。

 

【1】通常の贈与(専門用語で「暦年課税制度」といいます。)
→1年間で110万円非課税となる最初に適用されている制度

【2】相続時精算課税制度
→2500万円まで無税。超えても20%だが、相続税で計算し直すので節税にはならない制度で、届出を出すことで、通常の贈与から移行されて適用となる。そして、二度と暦年課税制度に戻ることはできない。

 

その1つ目の通常の贈与で使うことができるのが、相続税対策で使われる方法第1位の「110万円の非課税」です。

 

この110万円というのは、毎年1月1日から12月31日までの期間ごとに適用されますので、たとえば10年間毎年使い続ければ1100万円、20年間毎年使い続ければ2200万円も無税で、財産をあげることができる、非常に有難い仕組みです。

 

その110万円非課税枠を使うことができなくなってしまう点が、相続時精算課税制度のデメリットです。

 

ただ、この相続時精算課税制度は、「あげる人&もらう人」というセットで適用されるので、たとえば、お父さんからの贈与には相続時精算課税制度を使うけれど、お母さんからの贈与では相続時精算課税制度を使わないということもできます。

 

その場合は、お父さんからの贈与は、一生相続時精算課税制度となるので、1年間で110万円の非課税は使えなくなりますが、お母さんからの贈与には、1年間で110万円の非課税を使うことができます。

 

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