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バイオ医薬品関連企業の株価動向
12月のナスダック・バイオテック指数(ドルベース、配当含まず)は上昇しました。2020年12月のバイオ医薬品セクターは、前月に続いて堅調な展開となりました。2020年を通じて強気の見方が優勢となりましたが、継続的な資金の流入からも確認される通り、投資家の買い意欲が衰える気配は見られませんでした。革新的なテクノロジーを用いて創製される医薬品等、一部の銘柄群が買われ過ぎの様相を呈する一方で、がん治療薬等を提供する銘柄は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で苦戦する状況が続きました。
株価の変動が大きかった銘柄としてはアレクション・ファーマシューティカルズ(米国)、IGMバイオサイエンシズ(米国)、フェイト・セラピューティクス(米国)などが挙げられます。アレクション・ファーマシューティカルズは、アストラゼネカ(英国)による買収提案を受けて株価が上昇しました。買収は現金と株式交換で行われ、総額390億ドル(約4兆円)、前日の終値を42%超上回る1株あたり175ドル(現金60ドル+株式交換約115ドル)で実施されます。バイオ医薬品セクターでは数年来の大型買収が続いています。IGMバイオサイエンシズとフェイト・セラピューティクスは、上旬に開催された米国血液学会議で良好な治験結果を発表したことが好感されました。
今後のバイオ医薬品市場見通し
バイオ医薬品セクターについては、短期的には新型コロナウイルスの感染動向とワクチンの動向に注目が集まっています。一部の製薬企業やバイオ医薬品企業は新型コロナウイルスの治療薬やワクチンの開発を急ピッチで行っています。良好な治験結果を受けて、一部の国ではワクチンの接種が始まっており、現在は生産能力などのボトルネックに注目が集まっています。
さらに米上院で共和党、民主党どちらが過半数を確保するかを決定するジョージア州の2議席の決選投票が重要なイベントとして注目を集めていましたが、民主党が2議席を獲得しました。大統領および上下両院を民主党が掌握したことで、今後のヘルスケア政策の動向が注目されます。なお民主党、共和党の超党派で進めているメディケア(高齢者向けの医療保険プログラム)の改革の動きは、医薬品の価格の引き下げにつながる可能性がありますが、量的増加につながり、全体的にはポジティブに働くと考えます。
現在、医薬品に関連する医療費の議論で重要な転換が起こっています。いくつかの国では治療の有効性に応じて医療費を支払う制度(価値に基づく医療)が利用されていますが、処方薬で最大のマーケットである米国においても、従来の出来高払い方式ではなく、同様の制度を求める声は、ますます大きくなっています。
医薬品企業と同様に政府、規制当局、保険業者は、医薬品の開発においてイノベーションを抑制することなく、医薬品の費用を効率的に管理することができる妥協案を見つけることを必要としています。最も重要な利害関係者である患者は、破産のリスクにさらされることなく、高品質の治療を受けたいと考えています。これは、治療薬の開発といった科学的側面だけでなく、ビジネスモデルや先進的な思考、価値に基づいた契約といった側面においてもイノベーションを生む最高の機会となると考えます。
バイオ医薬品関連企業の売上高は相対的に高い伸びが見込まれる
バイオ医薬品関連企業の売上高は、新興国の企業を上回って堅調に成長してきました(図表6参照)。
バイオ医薬品関連企業については、①有望な治療薬候補の良好な治験結果の発表、②大型の新薬の承認、③新薬販売開始後の業績寄与の拡大などを背景に、米国企業や日本企業よりも相対的に高い売上高の伸びが見込まれています(図表7参照)。
売上高の伸びに沿って株価も上昇
過去の実績では、バイオ医薬品関連企業の株価は、売上高の伸びとともに上昇してきたことがわかります(図表8参照)。
バリュエーション
足元、新型コロナウイルスの治療薬およびワクチン開発・認可・接種への期待やバイオ医薬品企業の業績が景気動向に左右されにくい特性などが注目されて株価が上昇しており、PSR(株価売上高倍率)で見たバリュエーション(投資価値評価)の水準も上昇しています(図表9参照)。
※将来の市場環境の変動等により、上記の内容が変更される場合があります。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2020年12月のバイオ医薬品市場』を参照)。
(2021年1月19日)
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