資産家こそ現金を持たない
今年の世界長者番付は確認済みだろうか。フォーブズの発表によると、1位はAmazonのCEOジェフ・ベゾス「1310億ドル」、2位ビル・ゲイツ「965億ドル」、3位ウォーレン・バフェット「825億ドル」。皆、円換算すれば「兆」超えの資産家だ。
考えるだけで途方もない数字だが、フォーブズ編集者が公言しているように、これらは、一般公開されている資産を集計したに過ぎない。上に挙げた3名は、当然ほかの資産を抱えているだろうし、(税逃れのための)隠れ資産を持つ「名無しの富豪」は、至るところに潜んでいる。「マス富裕層(純金融資産が5000万円超から1億円未満の人)」という言葉も台頭してきたぐらいだ。実はお隣さんも、とんでもない資産家という可能性は存分にある。
資産と一言で片づけているが、その種類は実に様々だ。そして、俗にいう「お金持ち」ほど、現金を持たない傾向がある。株、債券、不動産、金(ゴールド)、美術品……富裕層が現金所持を避けるのは、庶民が気付けない「貯蓄のリスク」を理解しているからだ。
◆日本人が知らない「貯蓄」のリスク
借金を害悪と考える日本社会。清貧思想の結果か、「日本人のマネーリテラシーは幼稚園レベル」と揶揄されることすらある。
たとえば、「貯めている以上減ることはない」と考えている人を例に挙げてみよう。資産運用をとにかく危険視し、貯蓄さえしていれば安心と決めつけている。しかし、ウォーレン・バフェットの「インフレーションこそがもっとも重い税金である」という有名な言葉を思い出してほしい。たとえコツコツ貯金をしたとしても、物価が上昇していれば、現金の価値は下がっていく、つまり、相対的に資産は減っていくのだ。日本全体のスタグフレーション(景気が後退しながらも物価が上昇する状態のこと)を危ぶむ声も出ている。貯金をしていれば安心の時代は終わった。
加えて日本の場合、相続税率は、他国に類を見ないほど高い。「生前贈与」「タワマン節税」が話題になっていることからも分かるように、現金を所持していること自体が、リスクにつながりかねないのだ。
資産形成で必要なのは「節約」ではなく「お金の管理」
とはいえ、身近な話にならなければ、危機感は湧かないものだ。そこで以下のデータを見てほしい[図表]。総務省の「家計調査」より、社会保険料の推移を確認した。
少しずつ、少しずつ、しかし確かに、国民の負担が増加していることが見てとれる。大和総研の調査※1では、「平成の時代における家計の負担増は、主に社会保険料の増加によってもたらされたもの」と結論づけてすらいる。日本人の3人に1人が高齢者となる「2030年問題」も遠い未来ではなくなってきた今、社会保険料が減額される日など、想像もつかない。
※1 大和総研『平成の30年間、家計の税・社会保険料はどう変わってきたか』
そして2019年最大のテーマといえば、「老後2000万円問題」。メディアがこぞって報道したことも相まり、世間では「とにかくお金を確保しないと大変なことになるらしい」という抽象的な不安が増大した。
セゾン投信の中野晴啓氏が報告書の作成に携わっていたことから、「投資の扇動ではないか」との声も一部から上がっていた。しかし、このまま働いても老後にはお金が残らないという圧倒的な事実がある以上、さらにお金を稼ぐための手段といえば、「投資」のほかにない。当然の帰結ではないか。
投資は早く始められればそれに越したことはない。実際、楽天証券をはじめとする証券会社では、問題の本質をいち早く察知した人からの問い合わせが増加しているという。
◆「一方的に与えられる情報」を疑え
書店にいけば、投資関連のビジネス書が多数並んでいる。ネットで調べれば、何千万単位での情報が流れてくる。これだけで、行動するのが億劫になってしまう人は少なくないだろう。情報が多すぎて、どれも信用ならない、と感じてしまう人も多い。
しかし、投資情報の収集にあたり、「書籍だから安心」「ネットだから信用できない」といった意見はまったく的を射てない。問題の本質は、「一方的な情報提供」にあるからだ。
お金まわり、特に「投資」で大切になるのは、疑問・懸念・不安を払拭し、他者と意見を交わせるプラットフォームの確保だ。
では、どうすればいいのか。困ったときは、ぜひ自らの足でセミナーに赴き、生の意見を聞き、自分の声で質問することをオススメする。言うまでもないが、何事も、直接専門家に聞けるに越したことはない。目の前に投資のプロがいるのだ。話を聞き、やっぱり止めておこうと思えば帰ればよいし、メリットを感じたのならば、複数のセミナーに参加、吟味を重ね、投資を始めればよい。
とにかく第一歩、プロの話を聞くこと。「お金持ちの道」は、そこから始まる。
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