●4-9月期決算は依然として減収減益に、業種別では6業種が赤字転落となり、厳しい状況が続く。
●通期予想も厳しい数字だが、業種別にみると24業種が純利益予想を直近公表値から上方修正。
●業績悪化に歯止めも、ワクチン実用化には時間を要し、業績改善ペースは慎重にみる必要がある。
4-9月期決算は依然として減収減益に、業種別では6業種が赤字転落となり、厳しい状況が続く
日本では、3月期決算企業による4-9月期の決算発表がおおむね終了しました。そこで、今回のレポートでは、東証株価指数(TOPIX)を構成する3月期決算企業(金融を除く)について、11月16日時点で集計した1,330社の決算内容を検証していきます。なお、集計時点における決算発表の進捗率をみると、銘柄数で約99%、時価総額で約98%となっています。
はじめに、4-9月期の実績を確認すると、前年同期比で売上高は約15%減、営業利益は約42%減、経常利益は約37%減、純利益は約39%減という結果になりました。業種別にみると、純利益が増益となったのは「情報・通信業」など5業種のみで、「小売業」などの18業種は減益、「陸運業」などの6業種は赤字に転落するなど、引き続き厳しい状況が確認されます(図表1)。
通期予想も厳しい数字だが、業種別にみると24業種が純利益予想を直近公表値から上方修正
次に、2020年度通期の業績予想を確認すると、前年度比で売上高は約9%減、営業利益は約31%減、経常利益は約30%減、純利益は約32%減と、依然コロナの影響が強く残る見通しが示されました。業種別では、純利益について、「電気機器」などの3業種が増益、「石油・石炭製品」が黒字転換、「精密機器」などの21業種は減益、「陸運業」などの3業種は赤字転落、という予想になっています(図表2)。
ただ、2020年度通期の業績予想は、直近に発表されたものと比べると、改善傾向がうかがえます。具体的に改定率を確認してみると、売上高は約1%、営業利益は約18%、経常利益は約15%、純利益は約18%と、いずれも上方修正となっています。業種別にみると、純利益の通期予想を下方修正したのは、「水産・農林業」、「パルプ・紙」、「化学」、「鉄鋼」の4業種のみで、「空運業」は据え置き、残りの24業種は上方修正しています。
業績悪化に歯止めも、ワクチン実用化には時間を要し、業績改善ペースは慎重にみる必要がある
このように整理すると、3月期決算企業の4-9月期決算は、全体としては引き続き厳しい結果となったものの、2020年度通期の業績予想については、コロナの影響が強く残る見通しが示されるなかでも、改善の動きがあることが分かります。そのため、国内企業の業績については、4-9月期決算を踏まえると、業績悪化に歯止めがかかってきたと考えることができます。
足元では、ワクチンの開発進展に関するニュースが続いており、日経平均株価は11月17日、寄り付きで26,000円台を回復しました。ワクチンの開発が進めば、経済活動の正常化への期待が広がり、企業業績には強い追い風となります。一方、まだ世界的にコロナの感染収束には程遠く、ワクチンの実用化にも時間がかかるため、企業業績の改善ペースについては、慎重にみておく必要があると考えます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2020年4-9月期決算~中間決算の要点整理』を参照)。
(2020年11月17日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト