コロナ禍においては、学校の授業も従来の方法から変更を余儀なくされ、オンラインを導入するところが増えています。しかし、その学習効果を不安視する保護者は少なくありません。ハーバード大学、東京大学、開成高校のそれぞれで教鞭をとったベテラン教育者で、東京大学名誉教授・北鎌倉女子学園学園長の柳沢幸雄氏が、子どもたちの現状を伝えるとともに、不安を抱える親へアドバイスします。※本連載は、『「頭のいい子」の親がしている60のこと』(PHPエディターズ・グループ)より一部を抜粋・再編集したものです。

外国人との日常的な接点が、学生をグローバル化する

文部科学省は、グローバル化を目指し、高校留学や国際バカロレアを採用する学校への入学を推進しています。けれど、お金もかかり、英語力も必要。だれでもすぐに実現できるというわけではありません。もっと身近なところで「国際化」を実現したい、と思うのは当然です。

 

そこで私は、日本で外国の人たちと接することをすすめています。北鎌倉女子学園の生徒たちが、鎌倉の寺院を訪ねる外国人に、英語でガイドをするのもひとつの「国際化」です。オンラインで海外の人と話すのも、同様でしょう。

 

でも、もっと日常生活の中で長い時間、外国の人と接すると、その人の母国の文化や歴史が非常によくわかる。単に英語を使って1時間、2時間話し合う中では感じ取れない文化の深さを知ることもできます。

 

開成には、日本国籍ではない学生が5%くらいいるでしょうか。中国、韓国をはじめ、アジアの学生が多い傾向です。開成は受験に帰国子女枠がないので、彼らは日本の学生と同じ試験を日本語で受けて合格した優秀な生徒たちです。

 

彼らの存在は、学生たちをさまざまな意味でグローバル化してくれています。日本は部活動が盛んですが、韓国でも中国でもほとんど部活動を楽しむ時間がないという事実に驚いたり、また彼らの勉強量にたじろいだり。自分たちの常識と「違う」ことを見せてくれるので価値観が広がります。その上で交流することの意味や価値も、考えさせてくれる存在です。

自宅に留学生を受け入れるのも、ひとつの方法

クラスの中に外国人がいることは、子どもたちによい影響を与えます。「外国人」というと、欧米人を想像しますが、こうしてアジアの優秀な生徒と交わることで、自分たちの無意識の価値観を修正したり、立ち位置を考え直すこともできます。

 

日本各地には外国人がたくさん住む街があり、公立の学校では、先生方が苦労しながら混合教育をしているのだと思いますが、そのような街に住んでいるのなら、ぜひ、外国人の子どもたちとよい交流体験をしてほしいと思います。

 

こうした機会に恵まれない場合でも、自ら外国の学生と接する機会を作ることができます。たとえば、自宅に留学生を受け入れるのもそのひとつです。

 

留学生の受け入れをするホストファミリーを募集している団体はたくさんあります。お子さんが通う学校でも交換留学生を受け入れている場合もあるでしょう。そんなときはホストファミリーとして手を挙げてみてください。

 

部屋をひとつ提供するなど、住まいの条件がある場合は多いですが、家に外国人が同居することで、子どもたちは大きく変わります。

 

自分たちが当たり前だと思っていた常識が、他の国の人には通用しない。たとえば、中国の人は生野菜をあまり食べないとか、中東の人はお祈りの時間を必ず確保するとか、そういうことひとつとっても、自分たちの価値観だけが正しいわけではないことを痛感するでしょう。

 

できれば1週間、2週間と受け入れられるといいですが、1日だけでも受け入れてみると、家族じゅうがいい刺激を受けます。

 

私は、このような交換留学生の家庭での受け入れを企画したいとずっと考えていました。同じクラスの子を受け入れるのは、受験や部活が忙しい高校生だと大変かもしれないので、高校を卒業し、大学生となったOBの家で預かってもらうシステムが作れないかと。子どもが大学生になると保護者のみなさんも時間に余裕ができます。留学生のほうも、先輩がいる家庭ならいろいろ教えてもらえる。

 

学校では同年齢の仲間と交流し、家庭では先輩と交流できるのは、留学生にとっても大きなメリットですし、日本文化をよく理解した上で、自国に日本についての好印象を持って帰ってくれる。

 

いつかこのシステムで、子どもたちに本当の意味での「国際化」を実現してほしいと思っています。

 

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柳沢 幸雄

東京大学名誉教授

北鎌倉女子学園学園長

 

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「頭のいい子」の親がしている60のこと

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柳沢 幸雄

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