一方で外交面ではやや慎重な見方があった。菅氏が外務大臣など対外政策の重要ポストについておらず、外交経験が乏しいとの評価が目立った。日米関係について、井出氏は「トランプ政権と蜜月だった安倍政権から後退するリスクがある」と指摘する。熊野氏も「菅氏にとって外交は苦手分野ではないか」と懸念する。
窪田氏は「中国と世界の覇権争いをしている米国政府が日本に秋波を送るとみられ、日米関係は安定するのではないか」とみていた。日中関係については「米国の新大統領に合わせていく必要があり、その政策次第」(熊野氏)との声があった。
8月のM&A件数は、4カ月ぶりに減少も好調をキープ
8月のM&A件数(東証適時開示ベース)は、前年同月比5件減の68件だった。前年を下回るのは4月以来4カ月ぶり。この10年では4番目の多さで、一定の水準は維持している。
M&A市場は新型コロナウイルス感染の逆風下でも活況が続いていたが、踊り場にさしかかった可能性もある。今後の動向を判断するうえで9月のM&Aの動きが注目される。
全上場企業に義務付けられた東証適時開示のうち、経営権の異動を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A仲介のストライク(M&A Online編集部)が集計した。
金額面では今年初の1兆円を上回る超大型案件が2件あった。なかでも米コンビニ第3位のスピードウェイを2兆2176億円で買収するセブン&アイ・ホールディングスの案件は、日本企業によるM&Aとして歴代4位にランクインした。このところはコロナ禍を受けて海外の大型案件が減り、案件の小型化傾向が続いていた。
日本ペイントホールディングスは、筆頭株主のシンガポール同業、ウットラムグループの傘下に入ることになった。ウットラムは日本ペイントの実施する第三者割当増資を1兆1851億円で引き受け、出資比率を現在の39%から59%に引き上げて子会社化する。
武田薬品工業はビタミン剤「アリナミン」、総合感冒薬「ベンザ」など大衆薬子会社を米投資ファンドに約2420億円で売却する。これらを含めて取引金額10億円超のM&Aは11件。4カ月ぶりに2ケタに回復した7月(13件)に続き10件以上を確保したが、コロナ以前の月間20件前後にはほど遠い。
金額上位10案件は次の通り。
日高 広太郎
株式会社ストライク 執行役員 広報部長