1980年代から、若い男女の結婚願望の意識に変化がないにもかかわらず、未婚男女の6~7割が「交際相手」がいない現代。日本には、「結婚したいのにできない」という人が増えつつあります。日本人の結婚を妨げている要因とは、一体何なのでしょうか。本連載では、株式会社ニッセイ基礎研究所人口動態シニアリサーチャーの天野馨南子の著書『データで読み解く「生涯独身」社会』より一部を抜粋し、「未婚化」が進む現代日本の実像を読み解きます。

 

たとえばアメリカやヨーロッパは多民族国家で、一つの国家に多様な民族や宗教が存在しています。民族や宗教ごとに結婚制度が異なるため、一律の結婚制度では、一つの国の中での異民族(または異宗教)間の結婚をサポートできないケースもごく普通に出てくるのです。そのために、あえて画一的な法律上の結婚ではなく、事実婚や税制上の結婚をとるカップルも多数います。

 

こういった民族事情を無視して「日本は婚外子が増えないことが問題だ。だから未婚化から少子化の問題に発展している……」と決めつけてしまうのは、やや単一民族的な思い込みからきている発想だといえるかもしれません。

 

話を元に戻します。こうした多様な民族が入り混じる国の人々から見ると、未婚化の進行はあまり本質的な問題には見えません。

 

「未婚化っていってもそんなに悩む話なのか? パートナーはいるけれど、結婚しないだけなのでは? 婚姻届けを役所に出すか出さないかの差では?」。そんな見方も可能だからです。

 

しかし、日本においての未婚化は、多民族国家で考えられるような単なる制度の選択問題ではない、と言わざるをえないデータが存在しています。「パートナーはいるけれど、制度上の問題で法的な結婚はしない」という人が増えた結果とは考えにくいデータがあるのです。[図表2]を見てください。

 

[図表2]日本における18~34歳の若い男女の「交際相手がいない」割合の推移

 

これは18~34歳の婚歴のない未婚者のうち「交際相手がいない」人の割合(非交際率)の推移を示しています。2000年あたりからその割合が増加し、2005年以降は急激に上昇していることがわかります。

 

直近の2015年に行なわれた調査結果では、実に未婚の男性の7割、女性の6割が、そもそも「交際相手がいない」と回答しています。「婚外子が認められれば子どもが増える」という見解は、交際相手ありきの話になります。

 

交際相手がいない状態で、子どもの籍を入れる/入れないという議論は、あまり有効な少子化対策の議論とはなり得ないであろうことが、データからは見えてきます。

 

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データで読み解く「生涯独身」社会

データで読み解く「生涯独身」社会

天野 馨南子

宝島社

「結婚したいのに、できない」人が増えつつある、「生涯独身社会」日本。結婚の妨げになっている要因とは、いったいなんなのか―。本書ではさまざまなデータから、「未婚化」が猛スピードで進む現代日本の実像を読み解く。

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