たとえばアメリカやヨーロッパは多民族国家で、一つの国家に多様な民族や宗教が存在しています。民族や宗教ごとに結婚制度が異なるため、一律の結婚制度では、一つの国の中での異民族(または異宗教)間の結婚をサポートできないケースもごく普通に出てくるのです。そのために、あえて画一的な法律上の結婚ではなく、事実婚や税制上の結婚をとるカップルも多数います。
こういった民族事情を無視して「日本は婚外子が増えないことが問題だ。だから未婚化から少子化の問題に発展している……」と決めつけてしまうのは、やや単一民族的な思い込みからきている発想だといえるかもしれません。
話を元に戻します。こうした多様な民族が入り混じる国の人々から見ると、未婚化の進行はあまり本質的な問題には見えません。
「未婚化っていってもそんなに悩む話なのか? パートナーはいるけれど、結婚しないだけなのでは? 婚姻届けを役所に出すか出さないかの差では?」。そんな見方も可能だからです。
しかし、日本においての未婚化は、多民族国家で考えられるような単なる制度の選択問題ではない、と言わざるをえないデータが存在しています。「パートナーはいるけれど、制度上の問題で法的な結婚はしない」という人が増えた結果とは考えにくいデータがあるのです。[図表2]を見てください。
これは18~34歳の婚歴のない未婚者のうち「交際相手がいない」人の割合(非交際率)の推移を示しています。2000年あたりからその割合が増加し、2005年以降は急激に上昇していることがわかります。
直近の2015年に行なわれた調査結果では、実に未婚の男性の7割、女性の6割が、そもそも「交際相手がいない」と回答しています。「婚外子が認められれば子どもが増える」という見解は、交際相手ありきの話になります。
交際相手がいない状態で、子どもの籍を入れる/入れないという議論は、あまり有効な少子化対策の議論とはなり得ないであろうことが、データからは見えてきます。