1980年代から、若い男女の結婚願望の意識に変化がないにもかかわらず、未婚男女の6~7割が「交際相手」がいない現代。日本には、「結婚したいのにできない」という人が増えつつあります。日本人の結婚を妨げている要因とは、一体何なのでしょうか。本連載では、株式会社ニッセイ基礎研究所人口動態シニアリサーチャーの天野馨南子の著書『データで読み解く「生涯独身」社会』より一部を抜粋し、「未婚化」が進む現代日本の実像を読み解きます。

天野馨南子著『データで読み解く「生涯独身」社会』(宝島社新書)
天野馨南子著『データで読み解く「生涯独身」社会』(宝島社新書)

 

非交際率と生涯未婚率の推移は、タイムラグはありますが、ほぼパラレルであるといえます。この二つのデータから見えてくるのは、「交際相手がいないので未婚のままでいる」男女が急増している、という姿です。

 

街中で目にとまる若い男女の大半が、若いにもかかわらず、特定の彼氏/彼女を持たなくなっている、これが、データが示す今の日本の姿なのです。

 

もちろん、それ自体が個人にとって悪いことだ、と言うつもりはありません。そもそも今の男女が交際や結婚をしたくないなら、それもいいのです。決して周囲が強制するようなことではありません。

 

そこで、どれだけの若い男女が実際に結婚願望を抱いているのか見てみたいと思います。これについては、さきほど非交際率を示したのと同じ、18~34際の独身男女の結婚意志を尋ねた国の大規模調査結果があります。 

 

直近の2015年の結果を見てみると、男性の86%、女性の89%が「いずれ結婚するつもり」と回答しています。※注

 

つまり、若い独身男女の約9割が結婚意志を持っているということになります。そして、この割合は1980年代の調査からほぼ変わっていません。

 

データからは、日本の若い独身男女の9割が結婚したいと思っているにもかかわらず、その男性の7割、女性の6割には交際相手がいないということになります。これは、個人のライフデザインの変化の問題として片づけられる話ではない、1980年代までにはなかった日本の新たな社会問題、といえると思います。

 

未婚化が進む日本の現状について、「結婚を必ずしも望まないという、個人のライフデザインの変化の問題」「婚外子問題であって結婚はむしろいらない」として容認する意見があります。個人の希望としてそのように思うのは自由であり、否定されるものではありません。しかし、それを総論として「最近は、イマドキの若者は……」と語ることはできないことを、データは示しています。

 

ここまで見てきたように、「いつかは結婚したい」と、若い男女の大多数が昔と変わらず希望しているにもかかわらず、それが実現しないまま50歳を迎えるケースが急増しています。

 

結婚の希望が叶わなくなりつつあることを示す社会現象を、個人のライフデザインの問題、と見なして捨象してしまっては、多くの人が抱える問題を無視した議論となってしまいます。社会全体で、未婚化という問題をもっと正面から考えていく必要があるのではないか――。そんなふうに思います。
 

 

*注…設問「自分の一生を通じて考えた場合、あなたの結婚に対するお考えは、次のうちのどちらですか。」(1.いずれ結婚するつもり、2.一生結婚するつもりはない)。

 

 

天野 馨南子

株式会社ニッセイ基礎研究所 人口動態シニアリサーチャー

データで読み解く「生涯独身」社会

データで読み解く「生涯独身」社会

天野 馨南子

宝島社

「結婚したいのに、できない」人が増えつつある、「生涯独身社会」日本。結婚の妨げになっている要因とは、いったいなんなのか―。本書ではさまざまなデータから、「未婚化」が猛スピードで進む現代日本の実像を読み解く。

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