前回は、値幅制限と過去のチャートを活用して、迷いなくエントリーする方法を説明しました。今回は「集中投資」のメリットを見ていきます。

集中投資なら初心者でも「最大のリターン」を狙える

リスクを抑える有効な手段の一つとして知られているのが、複数の銘柄に分けて投資する「分散投資」です。ある銘柄は下がっても、また別の銘柄が上がれば値動きが差し引きされることから、銘柄全体の値動きを穏やかにする効果があるといわれています。

 

しかし、個人レベルの投資において、分散投資は本当に値動きを穏やかにする効果を発揮してくれるのかといえば必ずしもそうとはいえません。そもそも分散投資を基本として投資を行っているのは、巨額な資金を動かしている機関投資家です。つまり、分散投資の効果が効いてくるのは、ある程度まとまった資金で運用していることが前提になるのです。

 

それゆえ、個人投資家が広く銘柄を分散させようとすれば、日経平均株価に連動するETF(上場投資信託)か、投資信託を買うしか方法はありません。しかし、運用成績の良い投資信託は全体の一部しかなく、ものによっては満足のいく結果は得られにくいのが現実です。

 

一方、株式投資で銘柄を分散させようとすると、大損することもない代わりに、大勝ちすることもなく、短期的には大きなリターンが得られる可能性が低くなってしまいます。

 

また、複数の株式に分散する場合、銘柄の選び方や組み合わせ方、保有する株数などを考えなくてはなりません。単に、多くの株式に分散しておけば銘柄全体の値動きを穏やかにできるわけではないので、実際のところ、初心者が分散投資の効果を十分に発揮させることは思った以上に難しいのです。

 

さらにいえば、昨今は分散効果が思うように働かない局面が増えています。経済のグローバル化が進み、市場の連動性が高まったことから、リーマン・ショックや東日本大震災などの予測不可能な出来事が発生した際には、どの資産も一斉に下落してしまうからです。

投資判断に自信がない人ほど、分散投資で失敗する

対して、筆者が本連載で紹介している「低位株」投資では、一つの銘柄に絞り込む「集中投資」こそがもっとも成果が出やすい手法です。

 

投資判断に自信がない人ほど、「とりあえず銘柄を分散させておけば、大損は避けられるだろう」と、同時に複数の銘柄を保有してしまうことが多くあります。あるいは、最初は1銘柄に絞って投資していたのに、その銘柄の読みが外れると、次から次へと新しい銘柄に手を出してしまう人も少なくありません。

 

すると、次のようなことが起こるのです。

 

A株で含み益が出ている一方、B株は含み損が出ている場合、皆さんはどのような取引をされるでしょうか?恐らくA株については、そのまま保有し続けるか、早々と利益確定するかの2通りに分かれると思います。

 

しかし、B株については、そのまま保有する人がほとんどだと思います。このような損切りが遅れるという投資行動は、人間は不確実性の中で合理的な判断ができなくなってしまうという、まさに「プロスペクト理論」のとおりなのです。

 

もしかしたらB株が持ち直して、含み益を生み出してくれることもあるでしょう。しかし、これはあくまで結果論でしかありません。多くの場合、株価が自分の見立てと違った方向に動けば、さらに含み損を膨らまし続けるはずです。ですから、この場合B株は即座に損切りをすべきなのです。

 

確かに機関投資家などのプロの場合、同時に手掛けるのは30銘柄程度だともいわれています。しかし私は、3銘柄以上持つことはほとんどありません。

 

リスク管理という観点から見ると、取引額が少なく、多くの銘柄を扱い切れない初心者こそ一つの銘柄に絞り込んだほうが、注意深く値動きを監視できるため、安全かつ効率的にリターンを狙うことができるといえます。

 

二つの銘柄を同時に手掛けたからといって、必ずしもその分の利益が増えるわけではありません。慣れてきた人でも、3〜5銘柄が限界だということを忘れないでいただきたいと思います。

本連載は、2015年12月10日刊行の書籍『初心者でもがっぽり儲かる大化け「低位株」投資法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

初心者でもがっぽり儲かる大化け「低位株」投資法

初心者でもがっぽり儲かる大化け「低位株」投資法

紫垣 英昭

幻冬舎メディアコンサルティング

アベノミクス効果や日銀の金融緩和により、賑わいをみせている日本の株式市場。昨年からはじまったNISAに続き、ジュニアNISAの創設や教育資金一括贈与に係る贈与税の非課税措置の延長など、若年層にむけての資産形成支援も充実…

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