日々発表される統計情報を読み解けば、経済、健康、教育など、さまざまな一面がみえてきます。今回は、47都道府県の所得金額を比較して、地方の「稼ぐ力」の推移をみていきます。

20年で1人当たりの所得が増えたのは、わずか6自治体

さらに「所得税納税者1人当たりの所得金額」を20年前と比較してみましょう。最新統計2018年から20年遡り、1998年。2月、1972年札幌五輪以来のオリンピックが長野で開催、6月には、FIFAワールドカップフランス大会に日本が初出場と明るいニュースがあった一方で、経済成長は戦後最大のマイナスを記録。日本長期信用銀行、日本債券信用銀行が破たん、公的管理下におかれました。物価下落が企業収益の悪化を招き、不況へと連鎖するデフレスパイラルの危険性が叫ばれ、「平成大不況」といわれた時代です。

 

そんな時代と、延期となった東京五輪を前に浮かれていた2018年を比較すると、対1998年比で100%を上回ったのは、「東京」「京都」「愛知」「大阪」「神奈川」「兵庫」の6自治体だけ(図表5)。そのほかは100%を下回りました。20年前と比べて1人当たりの所得金額が減った、つまり稼ぐ力が弱くなったといえます。

 

出所:国税庁「統計年報」より作成
[図表4]所得税納税者1人当たりの所得金額対1998年比、上位10自治体 出所:国税庁「統計年報」より作成

 

上位からみていくと、やはり規模の大きな都市を有する自治体は強い傾向にあります。人口50万人以上をひとつの条件とする政令指定都市を有する自治体で、最も順位が低いのが、27位「新潟」87.9%。下位をみてみると、47位「秋田」78.6%、46位「青森」81.7%、45位「沖縄」81.9%、と地方が目立ちます。

 

[図表5]所得税納税者1人当たりの所得金額対1998年比、下位10自治体

 

そのなか、14位「福島」94.0%は、人口50万人以上の都市を有していないなか、健闘しているといえます。しかし2011年に所得金額総計が330,395百万円だったのが、翌年に419,178百万円に激増していることから、福島第一原子力発電所事故を受けた公的な支援などが作用していると考えられます。

 

今回、所得税納付者に限った統計を用いて、都道府県別の推移をみてきましたが、この20年を比較し、「都市」と「地方」の差がさらに鮮明になったということがわかりました。さらに1位「東京」129.21%に続く「京都」が105.18%という状況を顧みると、東京の一極集中が、この20年でさらに進行したといえるでしょう。

 

しかし、新型コロナの感染拡大でリモートワークが一気に浸透したことで、東京にいる必要がなくなった人が多くいます。さまざまな問題を巻き起こしている新型コロナですが、数少ないプラスの作用として「東京一極集中の是正」が実現できるかもしれません。

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