相続財産は被相続人の生前に調べることが大切です。相続人の力だけで財産の特定を完了することは難しく、税務調査で申告漏れの指摘を受けて初めて認識したというケースも少なくありません。また、相続で受け継ぐ財産には、預貯金や不動産だけでなく債務も含まれます。被相続人が多額の借金を抱えていることを知らないまま相続してしまうと、最悪の場合は破産する可能性も…。※本記事は、税理士法人・社会保険労務士法人タックス・アイズ代表 五十嵐明彦氏の著書『親が元気なうちからはじめる後悔しない相続準備の本』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)より一部を抜粋し、被相続人である親自身が取り組むべき相続対策を解説します。

「相続発生前の財産チェック」で借金地獄を回避

相続はすべてのプラス財産とともに、借金などマイナスの財産もその対象となります。ですから、たとえば親御さんが事業に失敗して多額の借金を負っていて、プラスの財産よりもマイナスの財産が多い場合は、みなさんがこれを相続すると、その借金の返済をしなければならないことになります。

 

「我が家は金持ちじゃない」と油断していると悲劇が…
「お金持ちじゃないし、財産なんてないだろう」と油断していると…

 

みなさんからしてみると、「借金が多いなら相続したくない」ということになりますが、このような場合は相続するかしないかを、相続人であるみなさんが自分で決めることができます。

 

相続には、プラスの財産もマイナスの財産もすべてを相続する「単純承認」のほか、相続人が財産を相続しなくてすむ方法として、「相続放棄」または「限定承認」があります。

 

「相続放棄」とは、プラスの財産もマイナスの財産も、一切相続しないというもので、相続人それぞれが単独で決めることができます。

 

「限定承認」とは、プラスの財産を限度に、マイナスの財産の支払いをするというもの。プラスの残りがあれば相続をし、マイナスが残れば相続しないという方法で、こちらは相続人全員が合意したときだけ選択することができます。

 

この相続放棄や限定承認をする場合は、相続を知ったときから3ヵ月以内に裁判所に申述しなければならないことになっています。

 

もし3ヵ月以内に手続きをしないと、自動的に「単純承認」したものとみなされて、みなさんは借金も相続し、返済することになります。

 

「そんなことなら、親が生きている間に事前に相続放棄をしたい」と思うでしょうが、みなさんは親が亡くなって初めて相続の権利が発生するので、相続する権利のない間は相続放棄はできません。

 

そこで、もし借金が多くてそれを負わされるのは避けたいなら、まずは親御さんに借金があるかないかを調べ、借金がある場合には相続放棄や限定承認をしたほうがいいかどうかしっかり見極めて、3ヵ月以内に手続きするようにしてください。

 

[図表]相続の3つのパターン

 

 

五十嵐 明彦
税理士法人・社会保険労務士法人 タックス・アイズ 代表

子どもに迷惑かけたくなければ相続の準備は自分でしなさい

子どもに迷惑かけたくなければ相続の準備は自分でしなさい

五十嵐 明彦

ディスカヴァー・トゥエンティワン

2019年法改正完全対応! 「親が読む」相続の実用書。 これまで相続税に縁がなかったかもしれないみなさんにも、相続税対策が必要になる時代がやってきました。 「相続なんてお金持ちの話」「まだまだ先の話だし、自分が…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録