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高度成長期(1955年〜1972年)
戦後10年が経過して、日本の戦争の傷跡は徐々に癒されていきました。朝鮮特需やベビーブームという追い風もあり、日本は本格的な高度経済成長の時代となりました。1955年以降、日本は年平均10%を越えるアジアの奇跡と呼ばれた高度経済成長を遂げました。それでは日本の高度成長を、順を追って見ていきましょう。
神武景気
神武景気とは、日本の高度経済成長のはじまりの1954年12月から1957年まで続いた景気拡大局面のことを指します。日本国が始まって以来、すなわち初代の神武天皇が即位した紀元前660年以来、例を見ない好景気ということで神武景気と名付けられました。1950年から1953年までの朝鮮特需、朝鮮戦争後も1956年に勃発した第二次中東戦争によって国際商品相場や海上運賃が高騰し、これを受けて日本では空前の設備投資ブームが起き、鉱工業生産、農業生産、国民所得がいずれも2桁の伸びを記録しました。
この景気拡大により日本経済は戦前の最高水準を更新するまで回復し、1956年の経済白書には「もはや戦後ではない」と記されて、戦後の復興が完了したことが宣言されました。好景気の影響は個人の生活にも恩恵をもたらし、三種の神器と呼ばれた白黒テレビ、電気洗濯機、電気冷蔵庫が普及しました。一方、輸入が急増したことから外貨不足に陥り、国際商品相場と海運運賃の下落もあって、1957年後半から1958年にかけて、なべ底不況となり神武景気は終焉しました。
岩戸景気、所得倍増
岩戸景気とは、1958年7月から1961年12月まで続いた景気拡大局面のことです。景気拡大期間が神武景気の31ヵ月をしのいで42ヵ月続いたことから、神武天皇からさらに遡って「天照大神(あまてらすおおみかみ)が天の岩戸に隠れて以来の好景気」として名付けられました。なべ底不況で石炭や海運業界は大きく落ち込みましたが、電気機器、精密機械、自動車といった業種は、ほとんどマイナスの影響を受けず、活発な技術革新によって設備投資主導の景気拡大となりました。好景気によってサラリーマンの所得が急増したことにより、三種の神器が急速に普及するとともに、流通革命によってスーパーマーケットが出現して大量消費社会が訪れました。
1960年12月には、当時の池田首相のもとで所得倍増計画が発表されました。この目標は、10年後の1970年の国民総生産を1960年の2倍の26兆円にするというものでした。具体的な政策としては、鉄道、道路といった社会資本の整備、産業構造を重化学工業へ高度化、自由貿易の推進と輸出競争力の強化、人的能力向上のための文教政策、産業構造転換による失業や賃金格差に対する福祉政策等があげられます。
オリンピック景気
オリンピック景気とは、1962年11月から1964年10月まで続いた高度経済成長の名称です。岩戸景気が1961年末に終わった後まもなく、東京オリンピックの開催に向けて、東海道新幹線や首都高速道路の建設、国立競技場や日本武道館といった競技会場の建設によって、再び景気が拡大しました。またオリンピックを見に行くための旅行やテレビの購入も個人消費を伸ばしました。
東京オリンピックが終わった1964年10月以降、証券不況と呼ばれる景気後退局面となりました。好景気を背景として、1961年の投資信託の残高が1兆円を突破するなど、証券業界は好景気を謳歌していました。ただし成長を前提としていた経営が行き詰ったことから、大手証券の一角である山一證券の経営危機が囁かれました。この事態を日銀特融という無制限・無担保の融資で乗り切ったことから、景気も底打ちの兆しが出てきました。
いざなぎ景気
いざなぎ景気は証券不況のあと、景気てこ入れのために建設国債と呼ばれる赤字国債の発行を閣議決定した前後から始まった景気拡大局面を指します。この景気は、1965年10月から1970年7月まで、岩戸景気をさらに上回る57ヵ月間も続いたことから、天照大神(あまてらすおおみかみ)の父であるいざなぎのみことの名前がつきました。この5年の間に日本の国民総生産(GNP)は2倍以上となり、1968年には当時の西ドイツを抜いて自由世界第二位の経済大国となりました。
景気拡大に伴って所得水準も向上し、車(car)、クーラー(cooler)、カラーテレビ(color TV)が3C(新・三種の神器)と呼ばれ、個人消費が大幅に伸びました。企業面では資本の自由化が進んだことにより、八幡製鐵と富士製鐵の合併による新日本製鐵(現新日鉄住金)の誕生、他にも第一勧業銀行(現みずほ銀行)、日商岩井(現双日)なども合併によって生まれました。
当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『実践的基礎知識 金融/経済史編(4)<高度成長期①>』を参照)。
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