知らず知らずに「相続税の申告漏れ」…追徴課税を避けるには?

相続税の税務調査の実地調査件数は年間1万2,000件以上。そのうち1万件以上で、申告漏れなどがあったと指摘されています。なかには意図せず申告漏れが生じたケースも珍しくありません。相続税申告200件以上を経験した相続・事業承継専門の税理士法人ブライト相続の天満亮税理士が、意図しない相続税の申告漏れを防ぐ方法について解説していきます。

とにかく「財産の計上漏れ」が怖いのです

相続税の申告ばかりをやっていますと、やはり税務署対応というものに敏感にならざるを得ません。曲がりなりにも相続専門税理士を自称して仕事をしている以上、恥ずかしいレベルの失敗はできません。依頼いただいたご遺族が余分な税金を払わないで済むように気を付けると同時に、近い将来に税務調査が入った時に戦えるように準備をしてから、実際の申告をすることになります。

 

税務調査で指摘される可能性がある点は、税理士としてきちんとご遺族に説明します。説明をすることによって、ご遺族に不愉快な思いをさせてしまうこともありますが、結果的に嫌われても、職務上の責任として、言うべきことは言わなければなりません。

 

その点で代表的なものとして挙げられるのが、生前贈与や名義財産です。これらを知るために、ご遺族からのヒアリングも非常に大事ですが、客観的な根拠資料として、過去の「贈与」や「相続」に関する申告の有無は、確認する必要があります。

 

知らず知らずの申告漏れで潰されないために……
知らず知らずの申告漏れで潰されないために……

なぜ、過去の「贈与」を確認する必要があるか?

相続税の申告に直接的に影響する「贈与」として、「直前3年内の暦年贈与」と「相続時精算課税贈与」があります。

 

特に後者に関しては、過去に申告や届出をしていれば無条件で相続税申告に反映させなければならないものとなります。仮にこれが漏れた状態の相続税申告をしてしまうと、税務署から指摘された際には戦うことすらできません。

 

贈与税の申告と納付は本来「贈与を受けた側」が行うべきですので、相続税申告時における相続人(存命の方)が把握していないというのは、実は論理的に破綻しています。

 

しかし現実問題として、「贈与を受けた側」(=相続税申告時における相続人。存命の方)ではなく、「贈与をした側」(=相続税申告時における被相続人。亡くなられた方)が贈与税の申告や納付を代わりにやっていたということは、経験上、無い話ではありません。

 

いわゆる「一人芝居の贈与」の場合は名義財産として課税される可能性が高いのですが、そうではなく、きちんと当人同士で把握していて、贈与自体は成立していたとしても、いかんせん何年も前の話ですので、「そもそも申告をしたのか?」「実際にどんな申告をしたのか?」を忘れている場合も当然あります。

 

家の中を探しても当時の申告書の控が見つからない。そもそも申告をしていたかどうかも分からない。そんな場合は、どうすれば良いのでしょうか?

なぜ、過去の「相続」を確認する必要があるか?

また、過去の「贈与」だけではなく、過去の「相続」も確認をする必要があります。

 

今回の被相続人(亡くなられた方)が、逆に相続を受ける立場であった場合、2つの面から過去の申告を確認する必要があります。

 

1つは、納税者にとって有利な話なのですが、相次相続控除を適用できるかどうかの確認のためです。詳細は省略しますが、簡単に言うと、過去の納付した相続税の一部を、今回の相続税から控除できるという制度があります。

 

もう1つは、まさに今回のテーマである、財産の計上漏れを防ぐという観点です。過去の相続税申告書や遺産分割協議書を見れば、今回の被相続人がどんな財産をどの程度引き継いでいたかが分かります。その財産の中には、今回の相続人(妻や子)が存在すら知らなかったものも含まれているかもしれません(実家の土地の持分を実は相続していた、等は比較的ありがちな話です)。

 

家の中を探しても当時の申告書の控えが見つからない。そもそも申告をしていたかどうかも分からない。そんな場合はどうすれば良いのでしょうか?

「過去の申告の有無」を、税務署へ確認する方法は?

記憶に頼るのも限界がありますので、しかるべき手続きを踏んで、税務署に確認することをお勧めします。「閲覧申請」や「開示請求」という手続きがあります。

 

「閲覧申請」の位置づけは、法令で定められた申告や届出ではなく、あくまでも行政サービスということになっています。したがって、閲覧申請書を提出しても、その申請書の控えに税務署の収受印ももらえません。余談ですが、納税者(税理士にとっての顧客)から税理士が委任を受けて閲覧申請をしても、実際にきちんと閲覧申請をしたのかどうかを、納税者に対して客観的に証明できずに苦労した経験があります。

 

受け付けているのは、所轄する税務署の管理運営部門となります。

 

また、あくまでも閲覧ですので、基本的には文字通り、見て、内容を手で書き写すだけです。最近は、申請の仕方によっては写真撮影も可能になりました。

 

もちろん闇雲には「閲覧申請」できませんので、目的(今回の相続税申告に必要なため)を明確にする必要があります。

 

「開示請求」は「相続税法第49条第1項の規定に基づく開示請求書」を使用して、被相続人の死亡時の住所地等の所轄税務署に対して、相続開始年の3月16日以降に行うものです。

 

もちろん「開示請求」も、その目的を明確にして請求する必要があります。実務的には、複数の相続人を開示対象者とすると課税価格の合計額が記載されて開示されるので、開示対象者を1人ずつとして開示請求することになります。

 

もちろん例外はありますが、「閲覧申請」よりも「開示請求」の方が、時間や手間がかかる印象です。

 

いずれにしましても、過去のことは過去のことで「今回の申告に関係ない」ということではなく、その内容や時期によっては無関係ではいられませんので、実務に精通した専門家に相談して、適正な申告をすることが重要となります。よく分からずに確認しないで申告をし、後から税務署に指摘されて修正申告となりますと、それこそ余分な手間と費用が掛かることになってしまいます。

 

 

税理士法人ブライト相続
天満 亮(てんま りょう)

 

税理士法人ブライト相続 税理士

東京都江東区出身。2004年、金井公認会計士事務所入所。中小企業者の法人税、所得税及び消費税申告業務を中心に、資産税業務、月次経理業務、給与計算業務その他幅広く従事。2012年、税理士法人レガシィ入社。200件超の相続税申告、相続税還付、遺言その他相続対策コンサルティング業務、相続セミナー講師、税制改正プロジェクト等に幅広く従事した後、2019年税理士法人ブライト相続開業。

著者紹介

連載実例で解説!相続専門税理士が教える「あなたに合った」相続対策

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