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バイオ医薬品関連企業の株価動向
2月のナスダック・バイオテック指数(ドルベース、配当含まず)は小幅に上昇しました。2月の株式市場は、二つの懸念材料を受け、波乱の展開となりました。市場に極めて大きな影響を及ぼしたのは、中国で発生した新型コロナウイルスによる感染症(COVID-19)が世界各地に広がっていることです。COVID-19は欧州にも飛び火してイタリアでは感染者が急増しており、世界規模の大流行(パンデミック)に発展する様相を呈しつつあります。感染経路不明の発症例は米国でも報告されており、どこまで拡散するかが注視されます。また、米国では民主党の大統領候補者指名を争う選挙戦も投資家心理に影響を及ぼし、「反資本主義(民主社会主義)」を標榜するサンダース氏が複数の州で勝利を収めたことが市場の不安感を強めました。
株価が大きく上昇した銘柄では、リジェネロン・ファーマシューティカルズ(米国)、バイオジェン(米国)、ギリアド・サイエンシズ(米国)などでした。リジェネロン・ファーマシューティカルズは、ノバルティス(スイス)の加齢黄斑変性症(AMD)治療薬(ブロルシズマブ)の副作用のリスクが指摘されたことを受け、リジェネロンの「アイリーア」との競合を巡る懸念が後退しました。バイオジェンは、主力の多発性硬化症治療薬テクフィデラを巡るマイラン(米国)の特許切れの主張を米特許商標庁が退けたことが好感され、株価が急騰しました。ギリアド・サイエンシズは、同社の抗ウイルス薬候補レムデシビルがCOVID-19の治療に使える可能性があり、現在、大規模な治験が進められ、4月にデータ発表が予定されています。
株価が大きく下落した銘柄では、ゾージェニクス(米国)とアムジェン(米国)が挙げられます。ゾージェニクスは、米国食品医薬品局(FDA)が同社の治療薬候補の承認を延期したことなどが嫌気されました。一方、アムジェンは、通期の会社予想が控えめなものに留まったことや開発中のKRAS遺伝子変異を持ったがんの治療薬候補について当初の意気込みが薄れたことが嫌気されました。
今後のバイオ医薬品市場見通し
現在、医薬品に関連する医療費の議論で重要な転換が起こっています。いくつかの国では治療の有効性に応じて医療費を支払う制度(価値に基づく医療)が利用されていますが、処方薬で最大のマーケットである米国においても、従来の出来高払い方式ではなく、同様の制度を求める声は、ますます大きくなっています。医薬品企業と同様に政府、規制当局、保険業者は、医薬品の開発においてイノベーションを抑制することなく、医薬品の費用を効率的に管理することができる妥協案を見つけることを必要としています。最も重要な利害関係者である患者は、破産のリスクにさらされることなく、高品質の治療を受けたいと考えています。これは、治療薬の開発といった科学的側面だけでなく、ビジネスモデルや先進的な思考、価値に基づいた契約といった側面においてもイノベーションを生む最高の機会となると考えます。株式市場の先行きには不透明感がありますが、そのような間でも、長期志向で、市場の非効率性に注目するアクティブ運用者にとっては、数多くの投資機会が存在するものと考えます。
バイオ医薬品関連企業の売上高は相対的に高い伸びが見込まれる
バイオ医薬品関連企業の売上高は、新興国の企業を上回って堅調に成長してきました(図表6参照)。
バイオ医薬品関連企業については、①有望な治療薬候補の良好な治験結果の発表、②大型の新薬の承認、③新薬販売開始後の業績寄与の拡大などを背景に、米国企業や日本企業よりも相対的に高い売上高の伸びが見込まれています(図表7参照)。
売上高の伸びに沿って株価も上昇
過去の実績では、バイオ医薬品関連企業の株価は、売上高の伸びとともに上昇してきたことがわかります(図表8参照)。
バリュエーション
2011年以降、バイオ医薬品関連企業の株価が大きく上昇したことから、PSR(株価売上高倍率)で見たバリュエーション(投資価値評価)は高い水準にありましたが、足元では株価の調整を受け低下しています(図表9参照)。
※データは過去の実績であり、将来の運用成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
※将来の市場環境の変動等により、記載の内容が変更される場合があります。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2020年2月のバイオ医薬品市場』を参照)。
(2020年3月27日)
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