私的年金の方法として、昨今話題になっている「iDeCo(イデコ)」。節税効果の高さから、現役世代の間で人気を博していますが、運用方法や金融機関の選び方を間違えると、思わぬ損をしてしまうことも。本連載では、楽天証券経済研究所ファンドアナリスト・篠田尚子氏の書籍『貯金も節約もできない人でもお金が増える方法』(かんき出版)より一部を抜粋し、iDeCoの基礎知識を紹介します。

iDeCoの商品選択には「コツ」がある

【ココだけおさえる】

・iDeCo(イデコ)の投資信託は「迷ったら、まずはインデックス型」

・保有商品はいつでも入れ替えできる

 

iDeCoの運用商品は、投資信託のほか、預金や保険も選択でき、両者を組み合わせることも可能です。iDeCoの世界では、価格変動のある投資信託のことを「元本変動型」、預金や保険のように原則として元本が保証されている商品を「元本確保型」と呼びます。

 

昨今の低金利環境を考慮すると、定期預金や保険などの元本確保型商品だけでは、負担した手数料を賄えるほどの利息収入を確保できません。まずは一部だけでもいいので、元本変動型の投資信託に振り分け、時間をかけて着実にリターンを積み上げていくことをおすすめします。

 

iDeCoで運用先として選択できる投資信託のラインナップは、運営管理機関によって大きく異なります。投資初心者の中には、どのように商品を選んで、組み合わせればよいのか、イメージがわかない方も多いと思います。

 

そこで、iDeCoの商品選択は、「迷ったら、まずはインデックス型」と覚えておけば問題ありません。iDeCoは、いつでも保有商品の入れ替え(これを「スイッチング」と呼びます)や、各商品の配分変更ができるので、資産運用に少し慣れてから、アクティブ型にチャレンジしてみるとよいでしょう。

 

また、投資初心者の方で、最初から掛金を100%投資信託に振り分けることに抵抗がある場合は、定期預金(元本確保型商品)50%、投資信託50%のように、元本確保型を組み入れて、徐々に元本確保型の配分を減らし、投資信託の配分を増やしていくことをおすすめします。

iDeCoの加入手続き「複数の機関から」書類が来る理由

iDeCoの加入手続きが完了すると、複数の機関から書類が送られてきます。なぜ加入の申し込みをおこなった金融機関だけでなく、複数から書類が送られてくるかというと、iDeCoにはさまざまな機関が関わっているからです。

 

1つ目は、iDeCoの実施主体である「国民年金基金連合会」です。国基連という略称で呼ばれることがあります。国民年金基金連合会は、厚生労働省の認可を受けて設立されており、確定拠出年金法に基づき、iDeCoの規約の作成や、加入者の資格の確認などの業務をおこなっています。

 

国民年金基金連合会からは、加入手続き完了時に「個人型年金加入確認通知書」が、毎年10月末から11月初旬には「小規模企業共済等掛金払込証明書」が、それぞれ届きます。「小規模企業共済等掛金払込証明書」は、所得控除を受けるために必要となる大切な書類なので、年末調整、または、確定申告をおこなうときまで大切に保管しておいてください。

 

2つ目の関係機関は、iDeCoの記録関連業務を担う「レコードキーパー」です。iDeCo加入者の各種の記録は、このレコードキーパーとも呼ばれる民間の専門機関で管理されています。

 

たとえば、楽天証券は「日本インベスター・ソリューション・アンド・テクノロジー株式会社(JIS&T社)」、SBI証券は「SBIベネフィット・システムズ」という機関がそれぞれレコードキーパーとして加入者の資産の記録・管理をおこなっています。

 

レコードキーパーからは、加入後、「パスワード設定のお知らせ」等、初期設定に必要な書類が届きます。届いたらすぐに開封して、早めに初期設定をおこなってください。

 

なお、楽天証券やSBI証券などの金融機関は、この国民年金基金連合会とレコードキーパーをつなぎ、加入者の皆さんの窓口の役割を担っています。加入申込の受付や、運用商品の選定・情報提供などをおこないます。「運営管理機関」とも呼ばれます。

 

さまざまな機関が関わっているiDeCoですが、加入者のための問い合わせ窓口は、運営管理機関である金融機関に集約されています。疑問点が出てきた場合はもちろん、以下のようなケースでも運営管理機関のコールセンターに問い合わせて、必要な手続きをしてください。

 

●氏名・住所等に変更があったとき

●掛金額等の変更や停止をしたいとき

●転職したとき

●掛金の引落口座や金融機関を変更したいとき

掛金の「年単位拠出」はボーナス払いもできる

iDeCoでは、2018年1月から、掛金の「年単位拠出」ができるようになりました。事前に金融機関(運営管理機関)に所定の書類を提出すれば、掛金の月額払いだけでなく、「ボーナス払い」のように特定の月にまとめて拠出することや、1年分をまとめて拠出することができます。

 

まとめて拠出できるのは、すでに経過した期間の拠出限度額の累計額です。つまり、掛金の「後納」ができるということです。

 

自分に合った拠出方法を選ぼう
自分に合った支払い方法を選択できる

 

iDeCoでは、掛金の引落日(毎月26日。休日の場合は翌営業日)を基準に1月引落分(前年12月分)から12月引落分(11月分)までを「1年間」として考えます。

 

年間の拠出限度額81万6000円の自営業者を例にすると、1月に全額拠出することはできませんが、12月にまとめて拠出することは可能だということです。職業柄キャッシュフローがイレギュラーで、特定の月にまとめて拠出したいという方は、この「年単位拠出」を選ぶことで、所得控除のメリットを享受しやすくなります。

 

また、月々の拠出限度額に満たなかった掛金の差額分を、年内に繰り越すこともできます。たとえば、拠出限度額月2万3000円の会社員で、掛金を毎月1万円の月額払いにしていた場合、差額の1万3000円は、毎月使い残して放棄することになりますよね。

 

そこで、ボーナスの支給月などに差額分をまとめて支払うよう、あらかじめ書類を提出しておけば、拠出限度額をムダなく使うことができるのです。

 

先ほどの差額相当分、1万3000円を年換算すると、15万6000円。この金額を2で割った7万8000円を、夏と冬のボーナス支給月にそれぞれまとめて拠出すれば、枠をフルに使い切ることができます。

 

(1万円×12回)+(7万8000円×2回)=27万6000円

 

なお、掛金の前払いはできません。あくまでも拠出する権利が発生した月についてのみ、後払いが認められます。

 

掛金を年1回、2回など、少ない拠出回数でまとめて拠出すると、口座管理手数料のうち、国民年金基金連合会に支払う手数料(月103円)を抑えられるというメリットがあります。この手数料は、原則拠出時にかかるため、拠出回数が少ないほど安くすむのです。

 

ただし、会社員や公務員の方など、定期的な収入が見込める方については、なるべく毎月一定額で拠出する、月額払いがおすすめです。なぜなら、この方法のほうが投資信託の積立効果が期待できるからです。

 

特定の月に拠出を集中させると、たまたま相場が大きく動いたタイミングと、拠出月が重なってしまうことも考えられます。相場が上昇し、投資信託の基準価額も大きく上昇したタイミングで拠出・投資信託の買付をせざるを得ないという事態はなるべく避けたいところです。お肉の値段が上がっているところで、まとめ買いするようなものですからね。

 

手数料がどうしても気になるという方は、せめて年4回程度に分けて拠出することをおすすめします。iDeCoの年単位拠出は、希望した場合のみ選択できる方法です。これからiDeCoに加入する場合は、「個人型年金加入申出書」の「5.掛金額区分」の枠内、「納付月と金額を指定して納付します。」を選択し、別途「加入者月別掛金額登録・変更届」という書類を提出します。

 

すでにiDeCoに加入していて年単位拠出を希望する場合は、加入する運営管理機関のコールセンター等に問い合わせて「加入者月別掛金額登録・変更届」を請求し、提出します。

 

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篠田 尚子

楽天証券経済研究所ファンドアナリスト

 

貯金も節約もできない人でもお金が増える方法

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日本に10名ほどしかいないファンドアナリストで、かつ、自らが多趣味で浪費型人間である篠田尚子。 節約苦手、浪費型ファンドアナリストである著者は、「お金は使う人ほど増やせます!」と断言します。 本書はお金について詳…

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