大幅下落が続く株式市場
クレジット市場も軟調
■新型コロナウイルスの欧米での感染拡大や原油価格の急落をきっかけとする金融市場の動揺は依然続いています。昨日は、リスク回避の動きが一層強まり、欧州の主要株価指数が10%以上下落し、米国株価指数も同様の下落となりました。高値からの下落率が2割を超え、株式市場はいわゆるベアマーケット(弱気相場)入りしました。
■昨日は、トランプ大統領が欧州からの入国禁止措置を発表しましたが、経済活動の停滞懸念が強まったこと、事前協議なしの判断であり国際協調に逆行する動きだったこと、等が嫌気されました。
■一方、欧州では欧州中央銀行(ECB)が、量的緩和の拡大と銀行への低利での資金供給を増加することを決めました。新型コロナウイルスの感染が拡大する中、銀行や企業が資金不足に陥らないようにする施策は妥当だと考えられますが、利下げ(マイナス金利の深堀り)が見送られた点が失望されました。また、市場全体にリスク回避の動きが強まる中、新興国の資産や通貨も下落が目立っています。
金融市場が織り込んでいること
一時的な景気減速と積極的な金融緩和
■リスク回避の動きの中で、主要国の国債市場は堅調に展開していますが、債券でも投資適格社債やハイ・イールド社債は軟調な展開となっています。これは経済活動の停滞によって企業収益が悪化するとの見方が強まっていることを反映しています。また、原油価格の急落により関連企業の収益が悪化するリスクについても嫌気されています。
■こうした中、各国政府・中央銀行は緊急対策を相次いで打ち出しています。財政面の対策は中小企業向けの低利融資や、経済活動の停滞による経済的損失への補償が中心です。金融政策は利下げや銀行への低利融資等、こちらも感染拡大が経済に与える影響を抑えることが主眼になっています。
■ただ、現時点では新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるには経済活動の停滞を伴ってしまうため、これらの対策が景気の落ち込みを防ぐことができるか市場は確信が持てない状況と考えられます。
感染拡大の収束を待つ展開が続こう
■市場参加者の関心は、米欧での新型コロナウイルスの新規感染がどういったペースで拡大し、いつ頃ピークアウトするかにあります。現時点では米欧での新規感染にピークアウトの兆候は見られませんが、中国では新規感染者数が大きく減少している他、韓国でも減少し始めています。
■引き続き、新型コロナウイルスの感染拡大の状況、治療薬の治験結果、中国の移動制限緩和と生産回復状況、主要国の財政政策、米国の雇用と消費者心理が堅調を維持できるか、中国の全人代日程と成長目標、等への注目が欠かせません。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ベアマーケット入りした株式市場』を参照)。
(2020年3月13日)
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