原油価格は一時27米ドル台へ
新型肺炎影響拡大と協調減産破綻
■北米の代表的な原油価格であるWTIは、新型肺炎の感染拡大によるグローバル景気減速が懸念される中、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟主要産油国の協調減産交渉が決裂したことから、一時1バレル=27米ドル台まで急落、年初来で5割程度の下落となりました。
■OPECは5日の臨時総会で4~6月に日量150万バレルの追加減産を実施する案で合意しましたが、6日主要産油国会合でロシアが追加減産を拒否し、交渉は決裂しました。これを受けこれまで調整役となっていたサウジアラビアが増産方針を打ち出したことから、需給悪化懸念が一気に高まったことが要因です。
2020年の原油需要見通しを大幅下方修正も増産へ
■3月11日に公表されたOPEC月報の3月号では、2020年の世界の原油需要予想は日量9,973万バレルと、前月見通しから100万バレルの大幅下方修正となりました。OPECは「中国を中心とした新型肺炎の感染拡大による需要減少が主な要因で、一段の引き下げもありうる」としています。
■需給均衡のためにはOPEC加盟国は前月比112万バレルの供給削減が必要となっていましたが、上記交渉決裂により需給調整は不能となりました。
原油価格反転が見込みにくい状況が継続
■新型肺炎の感染拡大による世界経済の減速懸念から各国は金融・財政政策を急いでいますが、一方で感染拡大防止のためには経済活動を抑制せざるを得ず、景気浮揚策の効果が見込みにくくなっています。原油の供給サイドを見るとロシアは「石油輸出国との協力を排除しない」とコメントし、6月のOPECプラスに前向きですが、サウジアラビアが態度を硬化させており、当面、原油価格は低位で推移すると考えられます。主要産油国の協調復帰が待たれます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『協調減産破綻で原油価格大幅下落』を参照)。
(2020年3月13日)
関連マーケットレポート
2020年3月10日 足元の金融市場の状況と今後の見通し
2020年2月18日 原油価格は新型肺炎の影響で下落(2020年2月)